くりぃむしちゅー上田晋也をMCに、古坂大魔王、浜ロン、清水あいりらが毎回さまざまな企画を展開し、今夏でテレ朝チャンネル史上最長15年目という長寿番組の「上田ちゃんネル」。そして、本番組に2019年6月からレギュラー出演し、番組を盛り上げているのが、別府ともひこ、篠栗たかしからなるお笑いコンビ「エイトブリッジ」だ。2020年元日に放送された「ぐるナイ おもしろ荘」での優勝がブレイクのきっかけとなった彼らだが、それまでの道のりは決して平たんではなかった...。そんなエイトブリッジに今回は"コンビ愛"について聞いた。
――お2人はワタナベコメディスクール(ワタナベエンターテインメントのタレント養成所)の同期ということですが、在籍当時は仲良くなかったとお聞きしました。
篠栗「そうですね。お互いにヤバいヤツだと敬遠していて(笑)」
別府「当時のぐり(篠栗)は結構年上だったんですよ」
篠栗「いや、今も年上だよ!」
別府「僕を含めて周りは19歳くらいの同世代が多くて。その時、ぐりが24歳くらいだったんで、よく遊ぶのがどうしても同年代になっちゃってたんですね。だから勝手に話が合わないって思い込んじゃってて」
――そんなお2人が、どうしてコンビを結成することになったんですか?
篠栗「養成所を卒業して、それぞれ違うコンビを組んでいたんです。その頃もライブなどではしょっちゅう一緒になっていたんで、あいさつくらいはしていたんですが、ほぼ同時期にお互いに解散しちゃって。しかも僕は元のコンビで既に『THE MANZAI』にエントリーしていたんですよ。それで別府ちゃんを誘ってみたのがきっかけですね」
別府「ぐりのことは、もちろん以前から知っていたんで、軽い気持ちで『いーよ』って感じで出たんですよ。すると、ちょっとウケたんですよね。でも、その時はあまり思い入れとかもなく『ウケるんだ、へー』くらいで」
篠栗「僕としては、すごく楽しかったんですけどね(笑)。それで『このままコンビでやってみない?』って、僕から誘ったんです。まぁ、一度断られましたけど(笑)」
別府「ピン芸人の活動で忙しかったんで」
――晴れてコンビ結成となったわけですが、方向性や将来的な目標は話合いされたりしたのでしょうか?
別府「やっぱり当時は『THE MANZAI』に出たいねって話してましたね。足並みは一緒だったよね?」
篠栗「そうだね。それで(以前の)事務所に一緒に入って。だけど、僕がバイトばっかりやっちゃって、結構ぶつかったりもしましたね」
別府「びっくりすることに30歳でパチンコにハマって、借金作って。ぐりは『パチンコは負けるようにできてるんだよ』なんて言いながら、こっそり行ってんだもん」
篠栗「一生懸命バイトに励んで、一生懸命パチンコを打ってという地獄のような日々でした」
別府「この頃は僕がネタを書いてましたね」
――その頃から、ズレたツッコミをする今の漫才のスタイルだったんですか?
別府「今のスタイルができたのは、有田さんの運転手時代に『バカの方がボケるのって普通じゃないか?ツッコミだったら新しいと思うけどね』とおっしゃっていただいて。そのスタイルでやったら、本当にウケるようになったんです」
篠栗「それに気付くまで4~5年かかりましたね」
――「おもしろ荘」で優勝して、その後「ウチのガヤがすみません!」などで、別府さんのキャラクターがウケて、ピンでのお仕事も増えられたと思います。コンビ間のバランスなどは崩れませんでしたか?例えば、篠栗さんが嫉妬してしまうとか。
別府「言われてみれば、そういう話はしたことないな」
篠栗「嫉妬はないですね。ないんですけど、『もうちょっと相方である僕の話をしてくれてもいいんじゃない?』って思うことはありました。世間では、別府ちゃんのことをピン芸人だと思っている人もたくさんいますから。もちろん、エイトブリッジの広告塔として頑張ってくれているのも知っていますから、『僕も力をつけないと』と常に思っています。別府ちゃんのボケはトリッキー過ぎて、ツッコむのが大変な時もありますが(笑)」
――お互いに思う長所や魅力をお聞かせください。
別府「ぐりの長所は、めったに怒らないところですね。そこに救われている部分がすごくあります。見守ってくれている感というか、お父さんみたいにずっしり構えているところが魅力ですね」
――まさにコンビ愛ですね!腹は立たないんですか?
篠栗「腹が立つことも正直ありますが、怒って強制するのも違うのかなと。別府ちゃんのキャラは、僕が作るものじゃないと思っているんで」
――すごく仲のいいコンビという印象ですが。
別府「なんでも報告し合いますからね」
篠栗「そうですね。顔を見るのも嫌ってことは、今までないかな」
別府「だけどズルいのが、恋愛のことは教えてくれないんですよ。僕は言うんですけど」
篠栗「別府ちゃんはめちゃくちゃ口が軽いんですよ」
別府「いやいや固いですよ。ぽろっと言っちゃうだけで」
篠栗「それを口が軽いって言うんだよ!」
――篠栗さんはいかがですか?
篠栗「常に笑顔のところですかね。別府ちゃんって、テレビを見ている人に元気を与えるのが天職なんじゃないかなって思うんです。仕事が連日入って疲れていても、いつもニコニコしていて。プロだなって思いますね」
――お互いにここだけは直してほしいというところは?
別府「上田さんを意識してか、ちょっと頭がいいふうに見せてはいるんですけど、結構天然なところもあるんですよ」
――確かに、しっかりされているイメージはあります。
篠栗「そこまで頭がいいわけじゃないんで...そのイメージに押しつぶされそうになったことは何度かあります(笑)」
別府「似た者同士だからね」
篠栗「一緒にするなよ!僕はそう思ってないよ!」
――篠栗さんは、別府さんに直してほしいところは?
篠栗「ネタを練習通りにやってほしい、ですかね。イメージ通りにできたことは一度もないです。ステージに立つたびに何が起こるか分からない状態で、僕もいっぱいいっぱいの時があるんで、そういう時はグダグダになるんですよ。『別府ちゃーん!』で、なんとか乗り切ってます」
――お互いに今、聞いておきたいことはありますか?
別府「今まで改めて聞いたことがないんで、何で僕を誘ってくれたのか聞きたいですね。何で僕だったの?」
篠栗「養成所に入った当時、別府ちゃんって、うるさいヤツって避けられていたんですけど、周囲が徐々に面白さを認識するようになっていったんです。自分からウケを狙っているわけじゃなくて、真っすぐにバカなこと言って、それがウケている感じで。いつのまにか別府ちゃんのことを嫌いな人がいなくなってました。お互いにピンになった時に、『別府ちゃんのキャラを生かした漫才をしたいな』って思ったのがきっかけですね」
別府「嬉しい!もう、お腹いっぱいです(笑)」
篠栗「僕もいい?別府ちゃんって、どこまでが狙いで、どこまでが天然なの?」
別府「昔、有田さんの前で狙ってボケたことがあったんですけど、『そんなんじゃなくて、思ったこと素直に言えば?』って言われたんです。そこから自発的にボケてないです」
篠栗「じゃあ、特に狙ってなくて思ったことを言ってるだけで面白いってこと?天才じゃん(笑)」
別府「変な空気なることも多いですけどね」
篠栗「そういう時、『何とかしろ』って目で見てくるんですよ。まぁ、僕も腕の見せどころではありますが」
別府「コンビですからね。ツッコミがいるから、思い切ったこともできるんです!」
――まさにテーマである「コンビ愛」じゃないですか!
別府「僕はコンビっていうより、もっと近しい感じというか。キスぐらいだったらできますね」
篠栗「やりたくないよ!」
――今後の目標を教えてください。
別府「コンビでロケに出る仕事を増やしたいです。エイトブリッジがロケをやると盛り上がるよね、って思われるようになりたいですね」
篠栗「別府ちゃんに相方がいるということを、世間の皆さんに知っていただくのが目標です」
別府「マネジャーさんとご飯を食べていたら、ファンの方に一度声をかけていただいたんです。『ファンです!嬉しいですコンビでお会いできて』って」
篠栗「いや、ファンも俺の顔知らないのかよ!(笑)」
文=松岡良和 撮影=永田正雄