学校や職場などの人間関係において、明確に危害を加えられたわけではなくても、何となく嫌な感じを覚えたことはないだろうか。距離感が異常に近かったり、プライベートに過剰に立ち入られたり、何かにつけてマウントをとられたり…といった、心がざらっとするような出来事。そういった名前のない悪意を「闇ハラスメント(闇ハラ)」と名付け、最初は小さな違和感からどんどん加速していく「闇ハラ」、そしてその陰に潜む真の恐怖を描く、辻村深月氏によるホラー小説「闇祓」が話題だ。全5章からなる本作では、各章ごとに高校、団地のママ友グループ、会社、小学校を舞台とした「闇ハラ」が繰り広げられ、そして最終章ですべてのストーリーが一本につながる。何とも言えない気持ち悪さに背筋がゾワッとする「闇ハラ」の恐怖と、最後に物語の真相が明かされるミステリー要素の合わせ技が話題となり、テレビでも取り上げられている本作について、作者・辻村氏と担当編集者・藤田氏に聞いた。
担当編集者・藤田氏「こういうヤバい人、周りにいるかも……と思わされる」
――最初に原稿を読んだとき、どう思われましたか?
圧倒的に面白い!新しい!と興奮しました。日常の地続きのモヤっと感に「闇ハラ」という名づけをしたことが画期的ですし、映像が浮かぶようなホラーの怖さがあり、斬新な構成とミステリとしての驚きがある。これは辻村深月さんの新たな代表作になると確信しました。
――連載および単行本化にあたり、編集として特に意識された点があれば教えてください。
『闇祓』はホラーとしての「画」の美しさや「音」の不穏さに満ちている作品だと思います。単行本化に当たっては、内容面はもちろん決めの擬音やセリフがページをまたがないよう、ページネーションにもギリギリまで気を配りました。
「一番怖い」と評判のエピローグから、漆黒の注意書きまでの流れはぜひ単行本でご確認いただきたいです。紙の書籍ならではの読書体験を味わえるのではと思います。
――「闇祓」の特に魅力と思われる点をひとつ教えてください。
こういうヤバい人、周りにいるかも……と思わされる共感性です。学校や団地、会社など様々なコミュニティを描いているので、きっと刺さるシチュエーションがあるはず。
――どんな方におすすめな作品ですか?
痛いホラーや残酷描写が苦手な方にも楽しんでいただけるホラーミステリなので、ぜひ手に取ってみていただきたいです!