[Alexandros]インタビュー
――映画の主題歌のオファーを受けて、どんな曲を作ろうと思って制作されましたか?
川上:まずは絵コンテと一緒に、いしづか監督の言葉で映画のテーマやストーリーをお話してくださって、その後、まだ完全じゃない状態でしたが映像も鑑賞させていただきました。それを見た時、監督が伝えたいものがそこから伝わってきたんです。だから、「こういう曲をお願いします」といった明確なことはおっしゃらなかったんですけど、自分なりに作品のテーマやメッセージを解釈して、曲作りに着手しました。
――15、16歳の少年たちの出会いや冒険が描かれた物語。川上さんはどう感じましたか?
川上:10代の少年たちの冒険が描かれてますけど、今思うと、その頃って行動範囲がそんなに広くないんですよね。10代の頃、相模原に住んでいたんですけど、渋谷に買い物に行くだけで、「明日、渋谷と代官山に行くんだよね」って前日からソワソワして、小旅行に行くぐらいの気持ちになっていたのを思い出しました(笑)。
この映画も最初はローカルな話から始まっていて、地元の花火大会で同級生たちに一泡吹かせてやろう!という感じなんで。冒険に出掛けたりするんですけど、その場所は地元からそれほど遠くない所だったりします。でも、ロウマたちにとっては大冒険なんですよね。
――その感覚、分かります。小学校、中学校、高校と進学するにつれて行動範囲は広がりますけど、それでもまだ地元が中心で…。
川上:そうなんです。自分もそうだったなぁって。1人の女の子の気を引くためにありとあらゆることをやって、それが全てだったあの頃とか。今思うと小さいことでも当時はものすごく大きく感じていましたし、そのための努力は惜しまなかった。音楽に関してもそうで、最初は学校の文化祭に出るためにはどうしたらいいのか?というところから始まってるんです。世界の中の、日本の、さらに小さい街の高校の文化祭に出るためにどれだけの努力をしたか(笑)。
でも、それが今につながっているわけです。全ての物事は小さいところから始まっていて、最初の頃は小さいからこそ止められやすくもあり、諦めやすくもある。でも、まだ“か細い”自分の欲望や情熱をずっと持ち続けることの大切さを監督は描きたかったのかなって思いました。監督とは年齢も近いので、共感できる部分も多い気がするんです。
――映像と主題歌「Rock The World」がしっかりとリンクしていて、一つの作品を作り上げている印象を受けました。
川上:見てもらって、そう感じてもらえたらうれしいですね。
磯部:この曲はスタジオにみんなで入って、ああだこうだ言いながらバーン!と音を出し合って作っていった曲なんです。コロナ禍で集まれない時期があって、それを経ての作業だったので、みんなで音を出して作るということ自体、気持ち良かったです。リアルタイムで、同じ空気に触れ合いながらお互いのパートのアレンジが変化していくのが楽しいんですよ(笑)。いろんな種類のエネルギーの込め方があると思うんですけど、スタジオで全員が音を出したことで生まれるものも間違いなくあると思いますし、それが「Rock The World」には込められています。
白井:まさに、セッションして作っていく大事さ、良さを実感しました。さっき言ってたように、監督も含めて、同じ世代のクリエーターが集まって1個のものを作っていくっていうのは、この映画の主人公たちと同じで“青春っぽさ”があるんです。それって年齢は関係ないんだなって(笑)。月並みな言い方ですけど、みんなで作っていくって良いですね。集まれなかった時期があったからこそ、作れた喜びもひとしおという感じです。
既にライブでも披露
――もう既にライブでも演奏されていますね。
リアド:完成した時、「すごくいい曲になったなぁ」って思ったんですけど、同時に「ライブで演奏したらどうなるのかな?」というのも思いました。「ライブで演奏してみよう!」ってことになって、スタジオでのリハでみんなと合わせた時、めちゃめちゃ好感触だったんです。みんなが熱を込めて演奏している中、メロディーとボーカルがすごく気持ち良く流れていて、そのコントラストがすごく美しくて、その時に確信しましたね。実際、ライブで演奏しても反応がすごく良くて、特別な曲になりました。
――ちなみに、リアドさんは15、16歳ぐらいの時どんな少年でしたか?
リアド:自分は小さい頃からサッカーをやっていて、高校に入った時に「どうしようかな?」って宙ぶらりんな状態になったんです。そんな時にバンドを組んでドラムを始めて。だからバンド自体が冒険みたいなふうにも考えられるし、そこから冒険が始まって、泊まるところがないのにツアーに出たり(笑)。だから、ロウマたちと重ねてしまうところがあります。きっと誰もが自分自身と重ねて見てしまうんじゃないかなって。