「『負け』というのはその人なりの解釈を経て人生に転じていくもの」怪物・井上尚弥と戦った“敗れざる者たち”の姿に感じたこととは<「怪物に敗れた男たち」高橋良美Pインタビュー>
今注目しているのは、期待の若手建築家!
――昨年の「なぜ村本大輔はテレビから消えたのか」など、BS12では良質なドキュメンタリーを数多く制作されてこられましたが、高橋さんの中で「次はこんなテーマを取材したい」という構想などはありますか?
高橋P:今本当にやりたいのは、若手の建築家・田根剛さんの企画ですね。海外でも賞を獲っている方で、日本ではすでにいろんな建築物の設計をされているんですが、田根さんの作品や考え方にすごく興味があって。
デビュー作が「エストニア国立博物館」の設計だったんですが、もともと旧ソ連の軍用滑走路があった場所をそのまま使っていて、「国にとっての負の遺産をそのまま民族の歴史を飾る博物館に使う」というアイデアが注目されたんです。
「未来の記憶」というテーマのもと、その場所が持っている歴史などを盛り込んで建築にしていくのが田根さんのスタイルなんですが、新国立競技場のコンペでは「古墳スタジアム」という案でザハ・ハディドさんの案と最後まで争っていたんです。
青森ではレンガ造りの倉庫をそのままリノベーションしてモダンな美術館を作っていたり、その考え方が今話題の「SDGs」に先駆けたものになっていて。これから建て替えられる帝国ホテル本館のデザイン担当にも決まっているんですが、2036年頃までかかるのでその様子を追うドキュメンタリーを長期スパンでやりたいです(笑)。
――それでは最後に、今回の番組の見どころを含めて視聴者の皆さんにメッセージをお願いします!
高橋P:今回この番組を作って一番思ったのは、「勝ち」というのは「勝ち」でしかないけれど、「負け」というのはその人なりの解釈を経て人生に何か転じていくものなんだろうなということで。先日まで北京五輪も開催されていましたが、高梨沙羅選手や羽生結弦選手の姿を見ていてよりそれを感じました。
番組の中では、佐野さん、田口さん、森合さんが三者三様の「負け方」をそれぞれ自分の中で噛み砕いて言語化した上で、「自分の中ではこういうものだった」と何かに変換していく作業をされていて。それは私たちの人生においても有用だなというか。
何かうまく行かないことがあった時、そこに意味を付けて解釈して何かに変換していく作業は自分にも置き換えられると思いますし、またそれは最初にお話しした沢木耕太郎さんの言葉にある「“いつか”はやって来ない」という部分にも繋がってくると思っていて。そういう読後感にできればと思って作っていきました。
そこは森合さんがきれいにまとめてくださっているので、ボクシングが好きな方はもちろん、そんなに見ないという方でも自分に持ち帰れるものがあると思いますので、多くの人に見ていただければうれしいです。
3月22日(火)夜9:00-10:00
BS12 トゥエルビにて放送
https://www.twellv.co.jp/program/documentary/bs12-sp/archive-bs12-sp/bs12-sp_08/