水瀬いのりが近年、頑張っていることとは?
――水瀬さんは人と仲良くなるのは得意ですか?
今でこそ、仲のいいスタッフさんやチームの方がいます。けれども、その方々に「人見知りしなくなってくれてうれしい」と言われるくらい人と距離を縮めるのが苦手です。最近では視野や自分の世界を広げるためにも、現場では自分より若い世代の人に話し掛けることを目標にここ1、2年は頑張っています。
――実際、その成果は出てきていますか?
私が新人の頃に今の自分くらいの方や、ちょっとお姉さんくらいの世代の方に声を掛けていただけることがあって、その時に緊張しましたが、同時に安心もしました。声を掛けていただくことでコミュニケーションのフックになって、人間関係が広がりました。自分自身もそういう存在になりたいなと思って、今は声を掛けるようにしています。
時々、別のインタビューで「水瀬いのりさんが話しかけてくれました」と言ってくれる後輩を見ると、「嫌な気持ちにもならず、むしろプラスとして受け取ってくれていてよかったな」と実感します。私も先輩としてではなく、一緒にもの作りを頑張る仲間という意味で話し掛けています。なかなか年齢やキャリアの差を感じて話し掛けられない子もいて、私はちょうどそんな方たちの間の年代なので先輩と後輩をつなぐ“架け橋”になれたらいいなと思っています。
私自身も不慣れで緊張しながら接するので、最初はよくわからない空気になるんですけど、思いがちゃんと届いてよかったなと思います。
――水瀬さん自身も距離間をはかるのが苦手な方なんですね。
私ははかれないし、むしろ、引き過ぎちゃう。一度失敗すると、二回目に同じことができないタイプです。でも、今は自分のスキルで人間関係を広げることができています。学生時代にはかれなかった経験があるから、人見知りする人の気持ちも理解しながら歩み寄れるので、その経験があってよかったかなと思います。
漫画なので強調して描かれていますけど、「本当はこう言いたいんだろうな」と感じることは、どの環境の中でもあると思います。でも、本作は距離間がはかれないことをマイナスではなく個性として描いていて、はかれないからこそつながれた関係があると教えてくれる優しい作品だなと思います。同じような悩みや自分の殻を破りたいと思っている人には、二人を近くに感じてもらえるような気がしています。
――最後に作品の魅力をお聞かせください。
本作は、人間関係の広がり方や人と人が交流することによって生まれる感情の動き、自分も知らなかった自分を知るきっかけを誰かがくれるというところがポイントになっていると思います。二人の出会い方は特殊ですけど、自分が想像もしていないところに自分の人生を変えるきっかけが転がっているかもしれないと感じさせてくれる物語です。二人が繰り広げる日常というのは、意外と皆さんの日常の中にもある一コマだと思います。なので、改めて人と交流することの大切さを作品を通して感じ取っていただけたらうれしいです。