この春から多くのバラエティ新番組が放送開始。その中でもひときわ印象深い番組について、“テレビっ子”ライター、てれびのスキマが語る。TVerをはじめとした見逃し視聴によって、改めて深夜バラエティにおける「実験」や「発掘」の機運が高まっているという。
サイクルの速さが特徴、テレ朝「バラバラ大作戦」
春は新生活が始まる季節。それはテレビの世界でも同じで、今年も多くの新番組が生まれた。
バラエティ番組の中で特に目立つのは、テレビ朝日「バラバラ大作戦」の枠だ。2020年10月から各20分の番組を放送する深夜枠として始まったが、その中から『キョコロヒー』や『かまいガチ』、『NEWニューヨーク』などが上の時間帯(現在は新設された「スーパーバラバラ大作戦」枠)に昇格。一方で、『ぼる塾のいいじゃないキッチン』、『イグナッツ!!』、『秋山とパン』など、終わってしまうには惜しい個性的な番組が短命に終わる、良くも悪くもサイクルの速さが特徴だ。
今期も阿佐ヶ谷姉妹の『阿佐ヶ谷ワイド!!』、蛙亭イワクラと吉住による『イワクラと吉住の番組』、『〜凪咲と芸人〜マッチング』をリニューアルし渋谷凪咲とハリウッドザコシショウのコンビとなった『凪咲とザコシ』、アルコ&ピースが進行するコントアニメ番組『アルピーテイル』、そして清塚信也による音楽考察バラエティ『キヨヅカライザー』が始まった。
『凪咲とザコシ』では、渋谷凪咲とザコシショウが、驚くほどの名コンビとなっている。『〜凪咲と芸人〜マッチング』時代にすでに証明されていたことではあるが、ボケまくる渋谷に対し、このコンビではツッコミに回ることが多いザコシという構図が新鮮で面白い。これまで冠番組を持ったことのないタレントが、この枠で初の冠番組を持つという例も少なくないのも特徴のひとつだ。
ありのままの「女子」会という感じが心地良い『イワクラと吉住の番組』
そんな中、特に注目したいのが『イワクラと吉住の番組』(毎週火曜深夜2:16-2:36)だ。ともに『アメトーーク!』の「生きづらい芸人」に出演した間柄だが、「2人でちゃんと話したことはない」という。「YouTubeだと思っていい」とスタッフに言われた2人は、探り探りトークしていく。2人の番組が始まると聞いたイワクラが「仲良くなるところを皆さんに見ていただけたら。たぶん仲良くはならないとは思うんですけど(笑)。ご飯とかは絶対行かない。お互い距離保つと思うんで」とコメントした通りの距離感が絶妙でクセになる。
基本的に2人ともテンションが低め。ロートーンでボソボソ語るのがリアルだ。それでいて、妙なところで「可愛い~!」と言って盛り上がったり、「おっぱい」写真を愛でて熱弁したりする。男社会の中で男が思い描く仮想の「女子」という感じではなく、ありのままの「女子」会という感じが心地良い。ディレクターを兼任するプロデューサーの小山テリハは、アイドル経験もあるという異色の経歴を持つ入社7年目の若手。番組テーマソングが佐藤千亜妃の「S.S.S.」だったり、番組キャラクター「ワタボコリちゃん」のちょっと変で可愛らしいビジュアルだったり、早くもいかにもこの番組らしいというトーンが出来上がっている。