韓国の事例に学び、声を黙殺せずに変えていくことが大事
番組では俳優だけでなく、映画関係のスタッフや業界関係者への取材を行うほか、アンケートなども利用して映画界の性暴力の実態に迫った。スタジオゲストには3月の告発後、明確に性暴力へのNOを発信したことも記憶に新しい白石和彌監督と、性暴力問題の専門家として相模女子大学大学院特任教授・白河桃子氏が出演する。
取材チームは、映画界で性暴力が発生してしまう原因はどんなところにあると考えているのだろうか。
「色々な性暴力に共通する問題でもあるので、映画界特有の点をピックアップするのは難しく、専門家と共に分析を進めている最中ではありますが、ひとつにはハラスメントが許容される文化が残ってしまっているのではないかということ、それから俳優・スタッフ含めフリーランスの方が多く、安心して相談できる窓口が存在しないため声をあげづらいことがあるのではないか、と考えています」(天野直幸チーフプロデューサー)
3月の告発時には、キャスティング権を持つ映画監督やプロデューサーから俳優へのハラスメントが多数明かされたが、被害者となるのは決して演者に限らず、スタッフがターゲットとされることもある。「とはいえ、日本社会全体がまだまだ性暴力の被害を訴えやすい環境とまでは言いがたい中で、俳優などの人前に出る仕事の方々が性暴力の被害者となった場合、声をあげるのは一層難しい面があるのではないか」と信藤記者は慮った。
こうした現状の問題点を分析する上で、番組では韓国の事例をひとつのヒントとしている。韓国映画界では2016年頃から性暴力の告発が相次ぎ、それを受けて社会全体が様々な対策の動きをとった。映画監督たち自身が性暴力を防ぐための現場ルールの制定を進め、同時に国も相談窓口の整備や、性暴力予防教育への支援といったサポートを積極的に行っているという。告発を受けて映画界全体が変わっていった事例として参考にできそうだ。
「韓国もアップデートしながら変わっている最中なので、ただ同じ取り組みをすればいいということではありませんが、上げられた声に対してちゃんと向き合って行動につなげる姿勢が何より大事だと感じます。日本でも今、声をあげようとしている方々がたくさんいらっしゃって、その声を黙殺せずに向き合って社会を変えていく動き自体が、日本社会に一番求められていることなのではないか。それでいうと、今回の告発に伴って、有志の映画監督や原作者といった関係者の会から性暴力の撲滅を求める声明が出されているのは、以前の『#Metoo』運動ではあまり見られなかったこと。その点は映画界の中からも少しずつ変化してきているのだと思います」(天野CP)