竜ちゃんは“いないけどそこにいる”
そしていよいよダチョウ倶楽部の真骨頂・熱湯風呂である。突然用意された浴槽を前に、「まったくこれだからアメトーークは……」と、もたもたと服を脱ぎ、中にしっかり着ていた水着に「いつのまに!」と驚く、いつものくだりはそのまま。
上島がかぶっていた豆絞りの手ぬぐいを、今度は肥後と寺門の2人がかぶる。いよいよ入浴というところで「一緒に入ろう!」と取り出したのは、同じ手ぬぐいをかぶった上島の写真パネル。いつも熱湯風呂に飛びこんでいたあの顔を抱え、肥後が「押すなよ!」と寺門に言う。「絶対押すなよ!」を合図に押す寺門。そのとき、肥後は写真パネルを浴槽に落とした。
熱湯風呂の底へ、こちらを向いた上島の顔が横向きにユラユラと落ちていく。その様子がなんだかおかしくて、スタジオも笑いの渦の中に。下手すれば遺影にも見えかねないパネルで笑いが起きるのは、ここまでのフリ、緻密な計算で作られたパネル(横向きに落ちるよう片側が重い!)、そして“上島竜兵”という存在があってのこと。
新生ダチョウ倶楽部は、竜ちゃんがいないと何もできないわけではないし、かといって2人で十分というわけでもない。見えない力に羽交い締めにされて熱々おでんを顔に受けるし、沈む竜ちゃんのパネルを救うために熱湯風呂に飛び込む。竜ちゃんは、いないけどそこにいる。それを観ているみんなも分かっている。
引きずるでも、忘れるでもない。こんな空白の埋め方はダチョウ倶楽部でしかできないし、出演者たちの愛情にあふれた「アメトーーク!」の現場だからこそできたことだろう。収録後の「反省会」をやり切って、2人は後輩たちに「ありがとう」と頭を下げる。みんなの愛に包まれながら、ダチョウ倶楽部の新たな章がここから始まる。
文=井上マサキ