アイドルは今や「何にでもチャレンジできる職業」
そして現在。2000年~2010年代中盤までのアイドルブームは一旦落ち着きを見せたかに見えるが、例えば指原莉乃ら、アイドルグループ卒業者が多くバラエティ番組に出演しているのを目にする。これは、“女性アイドル×バラエティ番組”の時代に彼女らがバラエティ能力を培い、その才能を開花させたからであり、そうしたバラエティのお手本のような番組はいまだ制作され続けている。
女性アイドルたちは、こうした番組でバラエティのイロハを学ぶ。例えば、本音キャラの日向坂46・齊藤京子は「キョコロヒー」(テレビ朝日系)で、芸人ヒコロヒーとタッグを組み、そのトーク力や反応、ギャグや本音のさじ加減などを学んでいる最中といえるだろう。ちょっとした“毒”が、彼女の可愛らしさをさらに増している。
乃木坂46・齋藤飛鳥も「ハマスカ放送部」(同系)で、OKAMOTO'S ハマ・オカモトと典型的なバラエティ番組を担当。ローテンションの齋藤飛鳥に合わせた演出であり、彼女の良さが出ると同時に、自身の個性の出し方を研究中のように見える。「AKB48、最近聞いたかも?」(テレビ東京系)はロケバラエティ。ロケのノウハウを彼女たちなりに表現しようと試みており、今後、ゴールデンのバラエティなどでのロケ企画に経験が活かせそうだ。
このほか、TVerで配信中の「セルフ Documentary of 日向坂46」(TBS系)では、日向坂のメンバーが他メンバーにインタビュー。舞台裏や本音が見えると同時に、相手から話を引き出す力、エピソードトークの仕方などの訓練にもなっている。彼女らの新たな一面が見えてくるのも魅力だ。
特に昨今は“アイドル”という肩書きのまま、バラエティ、ドラマ、舞台・映画など、単に“歌って踊る”職業ではないパフォーマンスを魅せるのが当たり前になってきた。実際、“アイドル”という肩書について「便利ですね。アイドルだからこそいろんなことにチャレンジできる」と語る声も聞く。オールマイティ故に、演技、バラエティ、ダンス、歌、どこからでも力を発揮できる可能性がある。
現在TVerでは様々なアイドル出演番組をまとめてチェックできる「アイドル出演番組」特集が配信されている。アイドル界からまた、新たなバラエティ王、バラエティ女王が生まれるか。指原莉乃を超える逸材が生まれるか。視聴率不振と言われて久しいテレビ業界、テレビを今よりさらに明るくしてくれる、次の“アイドル”=“スター”の登場に期待したい。
文・衣輪晋一(メディア研究家)