これまでの自分の中にはなかった新しい気づきでした
――連載が始まって、ファンの方からの反響などはいかがでしたか？
「次は誰が登場するんだろう！」って皆さん楽しみにしてくださっていたのではないかなぁと。内容も濃くて面白いと言ってくださる方も多くて、うれしかったですね。あとは“芸の道”というタイトルだからミュージカル俳優さんが主に登場されると思っていたらいろんなジャンルで活躍されている方がゲストにいらっしゃったことにも驚かれました。私にとっての芸はミュージカル・舞台ですが、人それぞれ“一芸”って違うじゃないですか。自分の視野を広げるためにいただいた連載だったので、どんどんいろんな方にアプローチしたいと思ってゲストの方をリクエストしていました。
――SNSなどでも「イラストレーターや芸人の方にインタビューするなんて、真彩さんはいろんなことを芸と捉え、自分の肥やしにすることができると思っているんだ」みたいな声があがっていましたね。第9回でお話を伺ったNHKオーディオドラマのプロデューサー兼ディレクターの藤井靖さんは制作サイドの方でした。
今回リクエストさせていただいた方は皆さんお会いしたことがなかったとしても、テレビや舞台で拝見して感じるエネルギーが強い方たちで。藤井さんは私が「1848」(2021年、NHK-FM)のオファーをいただいた際にとても熱を感じたのと、実際にお仕事でご一緒していろんな考えや思いをお持ちなんだろうなと感じて。例えば演出家の方の思いが強く、考え抜かれた舞台って興味深いと思うんです。そしてその演出家の方のお話を聞けたら絶対に面白いじゃないですか。オーディオドラマはこれだけ長く続いていらして…。どうやったらそれだけ愛される作品が作り出されるのだろうと思ってリクエストさせていただきました。
――もちろん藤井さんのお考えなども興味深かったですが、単純にあまり知ることができなかったオーディオドラマの裏側を垣間見ることができてとても面白かったです。
知らない世界を知るってやっぱり楽しいですよね！ 私もミュージカルという意味では同じ部分もありますが、宝塚をやめてから知らなかった世界に飛び込んでみようと思ったのは、知らない世界を知ることが楽しそう！と思ったからでもあります。
――ではここで突然ですが、第1回目の復習です！
なになに(笑)!?
――第1回目のゲスト・石川禅さんが「これから真彩ちゃんがこちらの世界に来て勉強するのは、宝塚の大先輩がおっしゃった『ちゃんと怠けなさい』っていうことなのかもしれないですね」とおっしゃっていました。きちんと怠けられていますか？
怠け…られていると思う(笑)！ もちろん舞台に対しては真剣に向き合っていますが、ストイックさの方向性が変わったかなと。インタビューさせていただいた皆さんはストイックではあるけれど、自分自身に優しい方、自分自身を抱きしめることができる方が多かったんですよね。それは決して甘やかしているというわけではなく、「頑張るときに一生懸命頑張っているから休むときは休んでいいんだよ」というスタンスで。これまでの自分の中にはなかった新しい気づきでした。
――浦井健治さんも佐藤B作さんからかけられた言葉をきっかけに「苦しんでエンタメを見せても、本当に命削り過ぎているものを見せられたらお客様は心配になっちゃう。だからその余力は、余白としてお客様に想像してもらう。それが演劇の醍醐味だから、全部説明しちゃだめなんだと言われて意識が変わりました」とおっしゃっていましたね。
気づかないうちに「もっとがんばらなきゃ」ってなってしまっている人も多いと思うのですが、人生ってなにもしなくても進んでいくし、知らず知らずのうちにみんな頑張っているんですよね。ゲストの皆さんが同じようにおっしゃられていて、お話を伺うたびに「間違っていないんだな」と再確認できたし、なんだか優しい気持ちになることができました。
――特に石川さんゲストの回の時は真彩さんご自身も退団してからあまり日も経っていなかったですもんね。個人的に取材時のエピソードで印象的だったのは、ある時真彩さんが担当者に「お元気ですか？私はちょっとハードで大変です！」と元気よく話しかけてくださったこと(笑)。担当者も様々な業務に追われている中だったので、とても元気をもらったし、真彩さんとお仕事できてよかったと心の底から思いました。
そんなこと言っていたんですね、すみません…(笑)。でも気の緩め方というのはこの1年くらいでつかめるようになったと思います。感情の表現が素直になりました。これまでは何かあっても「自分の感情を伝えるなんて！そんな!!」みたいな感じで言うことができなかったのですが、だいぶ自分の感情に正直な人になりましたね！
