“ハロウィーンの日”10月31日まで1カ月を切った。日本ではいつからか「仮装してドンチャン騒ぎをする日」「かぼちゃがスポットライトを浴びる日」みたいな認識になってしまったようにも感じられる今日この頃だが、もちろんアメリカのハロウィーンには長い歴史と由緒がある。このハロウィーン時期にぴったりの作品が9月30日に公開された、アン・フレッチャー監督、製作総指揮をアダム・シャンクマンが務める「ホーカスポーカス 2」だ。カタカナで書くとなんだかホカホカする温かみが漂うけれど、“手品師の呪文”転じて“いんちき”“でたらめ”といった意味を持っている。(以下、ネタバレを含みます)
約30年ぶりの続編も魔女3姉妹は続投！
1993年にケニー・オルテガ監督が手掛けた「ホーカスポーカス」は、サンダーソン3姉妹と呼ばれる悪名高い魔女3人が長い眠りから目覚め、ハチャメチャな大騒動を引き起こすハロウィーンファンタジームービー。続編となる「2」共々、現在ディズニープラスで配信中だ。およそ30年前に公開された前作で、物語の鍵を握る悪名高き魔女“サンダーソン3姉妹”に扮(ふん)していたのが、ベット・ミドラー、サラ・ジェシカ・パーカー、キャシー・ナジミーの3人。今作でもそれぞれウィニー、サラ、メアリーの3姉妹を演じる。
個人的には「セックス・アンド・ザ・シティ」で名を挙げたサラ・ジェシカ・パーカー以上に、ベット・ミドラーの存在がチャームポイントだった。3度のエミー賞、4度のゴールデングローブ賞、2度のトニー賞、3度のグラミー賞に輝く、最高峰の役者／歌手(歌手が演技しているとか、俳優が歌っているとか、そういう表現は全く通用しない。彼女にとってはすべて本業)であり、和田アキ子もアメリカでベットのショーを見て感動で涙が止まらなかったと、いつだったかのブルーノート東京公演で語っていた。たぶん一度も来日していないはずだが、やはり来日しなかったリナ・ホーン同様(招聘しようという動きはあった)、天文学的ギャラなのではないかと私は勝手に想像している。
そのベットをはじめとする“サンダーソン3姉妹”役の3人が、みんな健在で、この「ホーカスポーカス 2」にも出ているのだからうれしくなる。しかもしっかり30年近い歳月を反映させての登場なのだ。自然現象である加齢と実にナチュラルに付き合って、それがすごくいい味わいとなって演技に出ている感じだ。
ギャグや小ネタもたっぷり
ぼくは日本のベテラン女優の皆さんから「おばあちゃん」が消えて久しいと思っており、ただ画面にいるだけでおばあちゃんのグルーヴを生みだしていた飯田蝶子や北林谷栄がふと恋しくなるのだが、“サンダーソン3姉妹”のプロっぷりが、日本の演技界のどこかに刺激を与えることになったらとても面白いなと心から思う。
その3姉妹が約370年前(アメリカ建国以前)から時空を超えて、現代のマサチューセッツ州セーラムに降りたつ。マサチューセッツ州はアメリカ発祥の地といわれ、ボストンやケンブリッジなどの学園都市も有する州。ここを舞台に選んだのが絶妙過ぎる。
新しい国・アメリカの最も古い街に属する土地で、370年前からやってきた老魔女3姉妹が、現在を生きる仲良し女子高生3人組(いかにも今の映画らしく、肌の色もさまざまだ)と出会い、だんだん打ち解けて“祖母と孫”みたいになっていくところにも、胸のすく思いがした。本来であれば人間とは相容れない存在の魔女なのだが、見事に憎めない雰囲気を醸し出している。
鮮やかなCGに加え、魔女が初めて見る「蛍光灯」を「ケイコートーさん。確か会ったことがあるわ」と知ったかぶるなど、ギャグや小ネタもたっぷり。特にベット演じるウィリーの“顔芸(のような表情の変化)”も全然変わってなくてホッとしたし、韻を踏んでいる英語のセリフを、見事にリズムの良い日本語に置き換えた字幕担当者にも称賛を送りたい。
アメリカ映画の常としてエンドロールがとても長いのだが、そこで席を立ったり、早送りしたり、スイッチを切ったり、寝てはいけない。最後の最後に、猫好きならテンション高まること間違いなしのシーンや、“ひょっとして「3」の前兆か？”的な展開があるからだ。
つまり、最後の最後まで見逃せないのが「ホーカスポーカス 2」というわけである。でも、次は30年も待たせないでほしい…。
◆文＝原田和典
https://www.disneyplus.com/ja-jp/movies/hocus-pocus-2/
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