応援したくなる主人公を描くことを意識
――夢子の明るく前向きな姿勢が、関わる人々にもプラスの影響をもたらしていきます。人間関係の描き方で心がけているポイントがあれば教えてください。
毎回手探りで描いているのでポイントがあれば私が知りたいところですが…強いていうならば、私の漫画は考えたり考えなかったりしつつも、とにかく行動を起こす主人公に周りが引っ張られていく、みたいな話が多いんですが、主人公が人を動かすときになるべく説明や説教をしない、ということに気をつけています。説教ってリアルでも聞きたくないじゃないですか。なのでなるべく主人公の考えや行動に影響される、手を貸さずにいられない、それによりそのキャラにも何かしらの変化があるという。読者さんも含め、周りが推せる、応援したくなる主人公であることを意識しています。あとは個性的な主人公に負けじと周りも個性的になりがちですが「普通」目線のキャラクターも必ず置くようにしています。言うなれば読者目線とでもいいましょうか。そういうキャラがいないとお話が作者よがりになってしまい、読者さんが置いてきぼりになってしまうので。「デブラブ」で言うと経理の七瀬さんや企画部の細井さん、刑事の谷川くんとかですかね。そのためには作者自身も世間から著しくズレないように気をつけたいところです。
――特に気に入っているキャラクターがいれば理由と共に教えてください。
玉井さんですね。一生懸命な女性が好きなんです。頭の回転も早く要領もいいので仕事をテキパキこなすし。憧れます。ドラマにもありましたが、第3話で玉井さんが夢子のノートを盗んで「自分は無能だ」といって夢子に叱られるシーンでは、恥ずかしいのですが感情移入してボロボロと泣きながらネームを描きました。なので、あとになってやっと玉井さんの企画が通るシーンでは、本当によかったね!ととてもホッとしたんです。
南刑事にも愛着があります。こういう「なんか過去を背負ってるっぽい奴」が好きなのかも知れません。実は割と初めの頃から南刑事の過去設定はしっかりイメージがあったのですが、当初「デブラブ」は10話前後の予定だったため、そこまでは描き切れないと諦めていました。ですがお陰様で連載が伸びることになり、担当さんと「南の話も描けますね!」と喜んだ記憶があります。
あと実は梨香子も嫌いじゃなくて…いわゆる「メンヘラ」と言われればそうなのですが、私自身もものすごく脆いところがあって何かに依存しやすかったりするので、梨香子には割と近いものを感じています。一歩踏み出すのって勇気がいるし、変わるのが怖いから変わらないでいる方が楽という部分は、多分誰しも持ってると思うのです。そこを梨香子が自覚できるのか、今後夢子がどう絡んでいくのか。ぜひ見届けていただけたら嬉しいです。