7年ぶりにテレビ番組を見るというライター・城戸さんが、TVerで見た番組を独特な視点で語る連載です。今回は、6週連続で放送中の「私のバカせまい史」(水曜深夜1:00-1:30、フジテレビ)をチョイス。
北九州・成人式事情「私のバカせまい史」
福岡県・北九州にて比較的おとなしく生まれ育った者として、成人式というのは非常に厄介な存在であった。街には派手な格好をした若者であふれ、パトカーは何台も出動し、無礼講の空気感が街全体に漂っている。廊下にいるだけで蹴られたりなどしていた私はヤンキーが怖くて怖くて仕方がなく、普段から細心の注意を払って彼らとの接触を避けていたのだが、成人式となるとそうもいかない。家にいない限りは、一度や二度の遭遇は免れない。前から成人式帰りの集団が歩いてきでもしたら一巻の終わりである。
地元でそんな10代を過ごしたため、自分が二十歳になったとき、当然ながら成人式には参加しなかった。街でちょっと遭遇するだけで自分の頭を撃ち抜きたくなるほど嫌なのに、わざわざその場所に足を踏み入れる事はない。今となっては、せっかく北九州に生まれたのだから、全国的な知名度のある”北九州の成人式”に参加しておくのも悪くはなかったと思うのだが、そんなことは今だから言えること。当時は生きるか死ぬかの瀬戸際だったのだ。
進行役に永島優美アナ、そしてメインMCをバカリズムが担当する「私のバカせまい史」は、ゲストが研究した誰も調べたことのない”せま～い歴史”をプレゼンしていく番組。11月9日(水)の放送回では、アンガールズ田中が、北九州の成人式におけるド派手ファッションの変遷について、独自の解釈でプレゼンを行った。
この成人式ファッションの辿る変遷は非常に興味深いもので、これは是非、本編を見ていただきたいのだが、やはり印象深いのは、目立つために努力を惜しまない彼らの姿だ。物事の道理もそれなりに理解できるようになった今、彼らの姿を見るとそれなりに思うところがある。むしろ、一生に一度の成人式という場で最大限に目立ってやろう、知恵を絞って周りを圧倒するファッションで臨もう、というのは健全にすら感じられるし、少なくとも全員が全員ヤンキーというわけでもなく、文化を楽しもうと参加する姿勢もいくつか見受けられ、それもまた健気でよろしい……などと偉そうに宣ったところで繰り返しますが、こんなことは今だから言えること。当時は自分の身を守るのに精いっぱいだった。きっと、自分が二十歳に戻ったとしたって、また成人式に行かないという選択をしたに違いない。そもそもあんな催し、みんながマトモな格好をしていたって行くのは怖い。生まれついての臆病者には何ら関係のないハナシだ。
人に迷惑をかけちゃいかんが、一生に一日だけ、若さに身を任せてめいっぱい迷惑をかけたってバチは当たらないのかもしれない…などと彼らに好意的になればなるほど、成人式に行かないという判断をした自分の湿っぽさがどんどん増してゆく気がするので、やめておこう…。
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