満を押さえつけた浩一は耳もとで「耳たぶかんでいい?」とささやく
ベッドの上で仰向けになった満と彼を見下ろす浩一。見つめ合いながら「みっちゃんが俺のことを思ってくれるだけで十分だ」と言って浩一は包み込むように満に覆いかぶさる。満も応えるように浩一の背中に手を回す。
しっとりと静かな時間が流れたと思った瞬間、浩一がガバっと起き上がる。動揺しながら「これってどういう…俺、死体だよね…?」と聞く浩一。どうした?とけげんそうに満が聞き返すと、浩一は言いにくそうに「だから、その…」と自分の股間に目を落とす。満も浩一の視線の先に目をやると「うわっ!」と声を上げる。
ウソだろと信じられない満だったが、浩一は眉間にシワを寄せながら「俺、なんか熱い」と息苦しそうにつぶやく。満が浩一の首元を触ると体温が上がっていた。恍惚(こうこつ)とした表情を浮かべて「あぁぁぁ、ダメだ、みっちゃん…」と言った浩一は、急に満の手を押さえつける。痛がる満をよそに満の耳元に顔を寄せ、「みっちゃん、耳たぶかんでいい?」とささやく。そのウィスパーヴォイスは聞いているだけでもとても熱く感じられ、こちらまでゾクゾクとしてしまう。
「かむよ」とささやいた浩一はゆっくりと満の耳たぶをかむ。満がもだえて堪えきれずに声をもらすと、浩一はうれしそうに「その声やばいって」とささやく。それに対して小声で「バカ…」と応える満。恋人同士の睦言(むつごと)に見ている方の頬もゆるむ。
満をジッと見つめる浩一は「みっちゃん、触らして。ダメ?」と聞く。満は拒否することなく、浩一は満の頬や胸を撫でながら、ゆっくりと満の下半身に手を伸ばしていく。満は息を漏らしながら、目を閉じて浩一を感じるのだった。
“特別なこと”のあと、ベッドで横たわる二人。満が浩一の胸に顔を寄せ、浩一が腕枕をしてそっと満の頭に口づけて「おやすみ、みっちゃん」と告げる。満は浩一の体温の温かさと幸せをかみしめながら、安らいだ気持ちで眠りにつくのだった。
“死体”とのベッドの上での行為でありながら、穏やかで甘く温かいシーンが描かれた。見ているほうも苦しいほどに強くキュンキュンと悶絶させられつつ、優しい気持ちが胸いっぱいに広がる。同時に、浩一と満の幸せが続くようにとを願わずにいられなかった。
構成・文/牧島史佳