アカデミー賞国際長編映画賞を受賞した「ドライブ・マイ・カー」(2021年)で広く知られ、放送中のドラマ「エルピス—希望、あるいは災い—」(フジテレビ系)にも出演中の三浦透子による、初の単独主演映画「そばかす」が12月16日(金)に全国公開される。本作は他人に恋愛感情を持たない30歳の女性・佳純が、恋愛至上主義の世界で結婚や恋愛を勧める周囲と向き合いながら自身の幸せを探していく姿を描く。一般的なイメージに当てはめられることへの違和感について佳純に共感できたという三浦は、本作を「全員にとって自分ごとな映画」だと語った。また多彩な活躍が見られた2022年だったが、「俳優としての目標や理想像はない」という言葉からは、目の前のひとつひとつの仕事を大切にしていく姿勢が感じられた。
一般的な“26歳女性”像に当てはめられる違和感に共感
──最初に映画「そばかす」の脚本を読んだときの感想を教えてください。
私は今26歳の女性ですが、私自身も“26歳女性”に対して一般的にイメージされる像に当てはめられる違和感や、常識を共有される難しさを感じることのある人生だったので、読んでいてすごく救われる話だなと感じました。純粋に「この作品に参加させていただきたい」と思いました。
──“26歳女性”に対して一般的にイメージされる像に当てはめられる違和感があるとのことですが、差し支えない範囲で、どのように感じるのか教えていただけますか?
私が演じた佳純もそうでしたが、「若い女性はみんな恋愛するのが好きだよね」とか、男性と女性がいると、「その2人はお付き合いをしているの?そうじゃないんだったら今後どうなるの?好きなの?嫌いなの?」みたいな話になっていくことに対してです。「それ以外の形もあるんじゃないか」と思います。恋愛に限った話でなく、様々な場面で感じますね。でもそもそも、「自分がマイノリティなんじゃないか」と感じるシチュエーションに出会ったことがない人のほうが、実は少ないんじゃないかなと個人的には思っています。
──では佳純をどのようなキャラクターだと捉えて演じられましたか?
特に前半の佳純は、自分を理解してもらうのをどこか諦めているように見える。だけど私はそれについて悩んでいるということ自体に、強さも感じました。自分とちゃんと向き合っていて、自分がどういうものかを考えている人だからこそ持てる悩みなんじゃないかと。だからこそ、周りの「ほかの人と自分は違うんじゃないか」と悩んでいる人たちに対してものすごく優しい、心の広い女性だなと感じました。
リアルな瞬間を積み重ねていけた撮影
──佳純とご自身の共通点を挙げるとしたら?
言いたいことがちゃんとあるし、それを言語化する能力もあるのに言わないところが似ている。……と玉田(真也)監督が言っていたという話を、又聞きで知りました(笑)。
──それについて、ご自身ではどう思いますか?
そうかもしれないですね。客観的に見ると私も、佳純は言語化できる人だと思うのですが、私自身のことは言語化できる人だと思っていないし、たぶん佳純も自分では言語化できる人だと思っていないんじゃないかと思うんです。そこも似ているところなのかなと思います。
──玉田監督の話が出ましたが、監督とのやりとりで印象的なものがあったら教えてください。
まず、今作は撮影に入る前にしっかりコミュニケーションを取らせてもらえる環境だったのがすごく恵まれていて。だから脚本に関しての些細な違和感や疑問も言いやすかった。「違和感はわかるけど、フィクションなので飲み込んでください」と言われる現場もあるんです。それが悪いというわけではもちろんなくて、いろんな考えがある中で、玉田監督は「その細かい疑問や違和感を解消しましょう」とおっしゃる方だった。違和感を感じるラインが近かったということでもあるのかな。日常会話のようなものがずっと続く作品なので、おかげでリアルな瞬間を積み重ねていけたなと思います。
──そのほか共演者とのやりとりやお芝居で印象的なものはありましたか?
皆さん本当に素敵で。お一人お一人と一緒に撮影する時間は割と短かったんですが、どなたとも別れが寂しくなるような充実した時間を過ごすことができました。それはキャストだけではなく、スタッフさんも含めて。本当に人として素敵な方ばかりで、恵まれた現場でした。感謝しかないです。
TCエンタテインメント