女優・水野美紀が主宰を務める演劇ユニット・プロペラ犬の第8回公演「僕だけが正常な世界」のゲネプロが12月16日、東京芸術劇場シアターウエストにて開催された。
2016年以来6年ぶりとなるプロペラ犬の公演
本公演はプロペラ犬の2016年以来6年ぶりとなる公演。虚構と現実が入り混じる多層的な世界を描いて来たプロペラ犬が今回新たに挑戦するのは、歌やダンスも取り入れて描くダークファンタジーだ。崎山つばさ、鳥越裕貴、安里勇哉、定本楓馬といった2.5次元作品で活躍する俳優と、浅野千鶴、福澤重文、宮下貴浩、ノゾエ征爾ら演劇界に欠かせない俳優陣が集結。水野は母となってから初のプロペラ犬の公演、また、東京芸術劇場に初登場となる。
プロペラ犬の第8回公演「僕だけが正常な世界」とは
ずっと生きづらさを抱えて生きているミチル(崎山)。周囲の人間はミチルを普通じゃない、と責め立てるが、普通が何なのかミチルには分からない。「僕は別の星から来たかも知れない」孤独な少年ミチルは自分の居場所を探す旅に出る。裏切られ、傷つき、ミチルは怒りの炎に飲み込まれながら、復讐に最適な、理想の場所を目指す。それがシアターウエストで進んでいる世界。しかし、たった一人、シアターイーストと間違って舞台に紛れ込んでしまった役者が、世界を狂わせていく。
スタートからラストまで目が離せない本作。孤独な少年・ミチルの心情に胸を締めつけられながらも、合間で披露される歌やダンスでは、クスッと笑えるポイントも散りばめられている。テンポがよく求心力のある物語とパフォーマンス、演出は観客を一瞬も飽きさせない。登場人物ひとりひとりのせりふが刺さり、観劇した後は「普通」ということや「価値観」について考えさせられるような作品だ。脚本・演出は水野が務め、自らも出演する。