コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、『資本主義の悪魔』をピックアップ。
作者である小島アジコさんが12月11日にこの作品をTwitterに投稿したところ、2.6万以上の「いいね」が寄せられ反響を呼んでいる。この記事では、小島さんにインタビューを行い、創作の裏側やこだわりについて語ってもらった。
"毒舌"な資本主義の悪魔が教えてくれるビジネスの本質とは
『資本主義の悪魔』で登場する女性は、成功を求めとりあえず自己啓発本を読んでいる人間の一人だ。
そこに資本主義の悪魔が現れ、「そんなもの読んでもいい奴隷になるだけッスよ」と語りかける。資本主義の悪魔曰く、自己啓発本には成功するために必要なシステムの作り方は一切書いていないというのだ。ここから、資本主義の悪魔はいくつかの例題を交えながら、資本主義の本質について読み解いていく。
素晴らしい技術を持つ刀鍛冶と商社マンによる取引をもとに出される例題。このなかで、資本主義の悪魔は、「刀鍛冶刀の本当の価値に気づく前に、高い金額で技術・権利・特許を商社マンが買い取ることはWin-Winである」と主張する。はじめは「本来であれば、刀鍛冶のもとに入るお金を商社マンが横取りしている」と嘆く女性だったが、悪魔の助言によって徐々にビジネスの本質を知っていく。
成功者に必要なスキルは「人が必要としているものや、作っているものにアンテナを張れる人的ネットワークと行動力」であることまでたどりついた女性だったが、そんなスキルは身につけられないと落ち込む女性に資本主義の悪魔が"ある"取引をもちかける。
資本主義の悪魔はビジネスの本質を教えてくれる"いいキャラ"か"悪魔"なのか。「価値創造」について漫画を使ってわかりやすく説明している本作。Twitter上では「役立つ話」「最後の刺が気になる」「分かりやすくておもしろい」など多くのコメントが寄せられ注目を集めている。
人間が持つ"バグ"をついたキャラクターに…作者・小島アジコさんが創作の裏側を語る
――『資本主義の悪魔』はどのようにして生まれたのでしょうか?創作したきっかけや理由を教えてください。
この漫画を描いたのは2017年とかなり前なのですが、当時、やりがいの搾取や派遣社員や不正規の問題が表面化してきていた時期で、そういうニュースやブログの記事を見ながら、じゃあなんで搾取(に見えるもの)が起こるのか、ということを考えながら書きました。
――毒舌ながらも、最終的には学問・ビジネス的に正しいことを教えてくれる「資本主義の悪魔」のキャラクターはどのように生み出されたのでしょうか?
人間にはかわいいものや綺麗なもの、かっこいいものの言うことは素直に聞いてしまうというバグと、人でないもの、異形の物の言うことは正しいと思ってしまうというバグがあり、そこら辺をついたキャラクターです。説得力を持たせるための『仕組み』として資本主義の悪魔をデザインしました。
――作品を描くうえでこだわった点や、「特に伝えたい」ポイントがあればお教えください。
2017年当時のことなのであんまり覚えていませんが、これを読んで憤ったり、納得したり、笑ったり、いや厳密には間違っていると思ったり、色々な感情を持ってもらえたらいいな、と思って描いていたような記憶があります。
伝えたいこととしては、この漫画はざっくりとは間違ってないとは思いますが、厳密には多分あちこち粗がある漫画なので、真剣に受け取らないで欲しいです…。
――本作に限らず、小島さんが創作の際に着想を得ているものや意識していることがあればお聞かせください。
人があえて見ないようにしていることやなかったことにしていることを言語化(自分の場合は漫画ですが)していきたいなと思っています。
着想を得るために特にしていることはないですが、日常生活やニュースを見て感じる喜怒哀楽をできるだけ書き留めていくように心がけています。そういうのは気に留めておかないとすぐに流れていってしまうものなので。
――今後の展望や目標をお教えください。
なかなか時間が取れないのですが、ストーリー物などの長いお話を描いていきたいです。この漫画を描いた当時の2017年よりも今は景気も悪く暗い世相ですので、明るく楽しい話を描いていきたいです。
――最後に作品を楽しみにしている読者やファンの方へ、メッセージをお願いします。
なかなか更新できませんが、今後ともよろしくお願いします。「orangestarの雑記」というブログに過去に書いた同じようなテイストの漫画が置いてあります。同人誌もkindleに置いていますので、そちらもよろしくお願いします。
また、1月20日発売の月刊コミックバンチ3月号にて「4年3組のミチコさん」という短編が掲載予定です。そちら、読んでいただけると幸いです。