妻夫木聡が主演を務める日曜劇場「Get Ready!」(毎週日曜夜9:00-9:54 初回25分拡大、TBS系)が1月8日(日)より放送開始となるのに伴い、TVerでは妻夫木の過去出演作を配信中。同作で、パティシエと闇医者という2つの顔を持つ主人公・波佐間永介を演じる彼の、多彩な出演作を振り返る。
2年ぶりのTBS日曜劇場
妻夫木聡が約2年ぶりにTBS日曜劇場に帰ってきた。主演に妻夫木、共演に藤原竜也や松下奈緒、演出に堤幸彦と、そうそうたるキャストとスタッフを迎えたドラマ「Get Ready!」が1月8日(日)より放送開始となる。
妻夫木といえば、2020年10月期の日曜劇場「危険なビーナス」でも主演を務めた。東野圭吾の同名小説を原作としたラブサスペンスで、妻夫木が演じたのは独身の獣医師・伯朗。「弟の妻」を名乗る謎の美女・楓(吉高由里子)の出現により、30億もの遺産が絡んだある名家の争いに巻き込まれていく役どころだ。
権力や危機に立ち向かう、いわゆる“ヒーローポジション”の主人公が多い日曜劇場において、伯朗はかなり受け身。ウソをつけない純粋な性格には好感が持てるが、とにかく優柔不断で流されやすい。そんなやや情けない3枚目キャラが板に付いていた妻夫木のコミカルな演技も相まって、ミステリーでありながら重苦しくない、日曜劇場に新たな風を吹かす作品になっていたように思う。
リアルな“普通の人”になれる演技
ちなみに妻夫木が日曜劇場で主演を務めるのは、「危険なビーナス」が初めてではない。妻夫木の代表作である、2004年の「オレンジデイズ」もTBSの日曜劇場枠で放送されていた。実は18年前に放送されたこのドラマが、最近になってまた注目されている。それは今話題の「silent」(フジテレビ系)と同様に、主人公が聴覚障害を抱える相手と恋に落ちる物語だからだ。
妻夫木演じる櫂は社会福祉心理学を専攻する大学生。ある日、同じ大学に通う沙絵(柴咲コウ)と出会い、お互いに惹かれ合っていく。ただ、沙絵はバイオリニストとして将来を嘱望されながら、4年前に病気で聴覚を失ったことで心を閉ざしていた。そんな沙絵の気持ちをほぐしていくのが、不器用だけど真っ直ぐな櫂だ。どんなに拒絶されても沙絵とコミュニケーションを図ることを諦めない、櫂の誠実で優しい人柄に心奪われた人も多いことだろう。特にビーチで人目もはばからず、沙絵への思いを叫ぶ名シーンは平成ドラマ史に刻まれている。
だが、櫂が完璧な王子様かと言われたらそんなことはない。彼もまた、ごく平凡な大学生であり、就職先がなかなか決まらないというリアルな悩みを抱えている。妻夫木はこうした、どこにでもいそうな普通の人を演じるのがうまい。妻夫木自身はオリコンが発表する「男性が選ぶなりたい顔ランキング」に何度もランクインしたことがあるほど、同性からも憧れられるルックスの持ち主だが、周りの個性的なキャラクターを際立たせる一歩後ろに引いた芝居で、普通の人をリアルに演じることができる。映画「マイ・バック・ページ」(2011年)で共演した松山ケンイチも、同作の完成披露試写会にて「普通ってものを演じる難しさがあるんですけど、普通を演じさせたら妻夫木さんに勝てる人はいない!」と絶賛していた。
その上でさらに「危険なビーナス」のようなコミカルな動きや台詞回しで、自分が演じる役をチャーミングに見せることもできる。普通だけど、決して印象が薄くはならない。誰もが好きになる主人公を生み出せるのが妻夫木の強みだろう。
SMR(SME)(D)
発売日: 2011/10/17
東宝
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