渋谷、台本を読み「普通って何だろって強く感じた」
――主題歌として書き下ろされた「ないしょダンス」は、まさにご自身のことを歌われているのでは?と思うほどにリアルでしたからね。
渋谷:そうなんです。すごく自分自身と重なったんです。ドラァグクイーンやLGBTQ+の方達みんながそうであるかどうかは分からなかったんですが、「ひみつのなっちゃん。」の台本を読んだとき、“すごく狭いところで生きている感覚”という孤独と、歌詞にも書かせて頂いたんですけど、“じゃあ普通って何なんだろ”ってところを、とても強く感じたんです。
ドリアン:すごく分かります。すばるさんは、私達みたいに性的マイノリティではないけれど、そうではないところで“すごく狭いところで生きている感覚”で生きてこられたのかなっていうところでは、共通するところを感じます。周りにゲイとかレズビアンの方っていらっしゃいました?
渋谷:いました。同級生で、元々女の子だったんやけど、男の子になった子が。でも、僕はそこまで特別視をしていなかったから、ほんまに何も考えんと接してましたけどね。
ドリアン:なるほど。すばるさんにとっては自然なことだったんですね。
渋谷:そうですね。特別な目で見るとかは全くなかったです。ただその事実をすんなりと受け入れてただけだったので。
ドリアン「み~んな変!でいいじゃん!」
――よく“カミングアウトする”“カミングアウトしない”という言葉を聞きますが、やっぱりまだ隠さないと生きづらい世の中ということなんでしょうかね?
ドリアン:そうなのかもしれないですね。日本もだんだん自由になってはきているのは確かですが、制度が追いついていないところがありますから。それに、制度云々ではなく、やっぱり気持ちの問題で偏見というのはなくならないと思うんです。だからこそ隠したいと思ってしまう方も多いのではないでしょうか。
渋谷:人と違うということって、特別じゃないって思うんですよね、本当は。でも、人間って珍しいものとか、他とは違うものに対して、反射的に“え?”ってなるからね、絶対に。その反応は仕方ないことだと思うんですよ。
でも、そこから、ちゃんと真っ直ぐに向き合って、それをちゃんと受け入れていけばいいことやと思っているんです。特別視されるのが本当に嫌なんです。小さい頃からそういう生き方して来ちゃったから、本当に大嫌いなんですよね。周りの人とかに気を遣われるような生き方して来ちゃったから。
こういう仕事をするようになってからは、“コンビニとか行くんですか?”とか聞かれたりもしてたから、“え?なんで?コンビニとか行くでしょ。なんでそんなこと聞くん?”って思ってたりもしたし。たまたま仕事がこういう世界なだけで、僕も人間やねんけど…特別やないねんけど…って思ってたし。それに、自分はこういう世界に入る前からちょっと変わってたというか、小さい頃から自分でも周りに馴染めてない自覚があったんですよ。
ドリアン:この世界に入る前からですか?
渋谷:そうなんです。なんか、変な目立ち方をする子やったんです。自分でも、自分ってちょっと変わってんなぁって思って自覚してたところもあったから。ずっと“普通って何なんだろう?”って生きてきたので、ここにきて、こんなにもそれについて語り合えていることが嬉しいんですよね。
ドリアン:本当にそうですよね。“普通って何なんだろう?”って私もずっと思って生きています。“私の普通は貴方の異常で、貴方の普通は私の異常”っていうことって、世の中に溢れていると思っているんです。だからね、み〜んな変だと思ってるの。み〜んな変!でいいじゃん!って。
渋谷:本当にそうかも。一緒であることの方がおかしいですよね。だって、みんな違う人間なんやもん。1人1人違って当たり前なのに。なんで“普通”にしたがるのかな?みんな一緒にしたがるのかな?みんなと同じじゃないとダメ!っていうのはどうしてなんかな?日本人だから?
ドリアン:みんな同じにしておけば、管理が楽で済むからね。そういうことじゃないかしら?
渋谷:あ〜。なるほど。そうすることによって、良いこともあるのかもしれないけど、そうすることによってシンドイ思いをする奴もいるよね、絶対に。後者の人達は、少なくないと思うんやけどなぁ、俺。田中監督も滝藤さんも「ないしょダンス」の歌詞の中にある“じゃあ普通って何なんだろ”っていうところにとても共感してくれていたんですよ。そう思っている人って、案外多い気がするなぁって、今回改めて感じたことでもあったんですよね。
ドリアン:“普通にならなくちゃ”とか“自分は普通じゃないんだ”っていう思いを抱えて苦しんでいらっしゃるみなさんは、少なくないと私も思います。私も実際に、よくそういう悩みを抱えた方から相談を受けたり、お便りをたくさん頂くんですよ。
渋谷:やっぱそうですよね。ドリアンさんはそういう相談に、なんて言ってあげているんですか?
ドリアン:私はそういう相談に対しては、“普通じゃない”って言われたら、“自分は抜きん出た存在なんだ!”って思うようにしなさい!って言ってるの。自分は卓越した存在だと思うようにして!って伝えるようにしているんです。
渋谷:(すごく納得のいった表情で)なるほど。うんうん。
ドリアン:“普通”よりも、頭一個出てるってことなのよ〜!そう思った方が絶対にいいわ!って思っているの。さっきすばるさんが“日本だから?”っておっしゃっていたけれど、それもあると思う。日本は特にだと思うんですが、個性を削ぎ落として削ぎ落として、管理したがる社会だから。
渋谷:でも、本当に“普通でなければいけない”という考え方を改めて見つめ直すと、どんどん“普通って何?”って思えてきますよね。逆に、その“普通”にも人それぞれの“普通”があるから、一緒じゃないんじゃないの?って思えてくると言うか。
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