真澄は律に出会ってひと目で恋に落ちる
図書館で人とぶつかって落とした本を拾おうとした真澄の手と、ぶつかった男の手が触れ合い、顔を見上げるとそれはかつて自分を深く傷つけた律(中田)だった。律も真澄に気づき、「変わんねぇな、何年ぶり?」と平然と声をかけてくるが、真澄は動揺して律に背を向ける。
2011年、真澄は大学生でミニコミ誌を制作する地味な出版サークル“辺境倶楽部”に所属していた。秋の新歓シーズン、華やかなサークルのそばでひっそりと勧誘のテーブルにつく“辺境倶楽部”の会員たち。コンビニに行く先輩たちに留守を任され、真澄はひとりで店番をすることに。
勧誘の喧騒のなか真澄は居眠りをしていると、「すみません」と声をかけられる。寝ぼけながら目を開けた真澄の前に爽やかでモテそうなイケメン・律が立っていた。真澄は吸い込まれるように律に見惚れる。
律はミニコミ誌を手に取り、新刊と前号をくださいという。買う人がいること自体に驚く真澄に律は“ヘンクラ”が好きだといい、前号の記事が面白かったと語る。それは真澄がてがけた記事で、謙遜しながらも喜びを隠せない真澄。そして、意を決して律を“辺境倶楽部”の入会に誘った。
真澄が一瞬にして恋に落ちる様子に見ているほうも胸がときめく。自分のことを認めてもらったうれしさとともに恋の高揚感が高まっていく気持ちが伝わってきてキュンキュンとさせられた。「ポルノグラファー」から続投する小山絵里奈の音楽も効果的で、繊細なピアノの旋律も胸に響いた。
◆構成・文=牧島史佳