NHK Eテレで放送中の「オイコノミア」(毎週水曜夜10.00-10.45)は、日常生活の疑問や悩みを経済学の観点から解き明かす番組。今回、放送開始からMCを務める又吉直樹に、番組に対する思いや文学と経済学の共通点を聞いた。
メリットもデメリットも知ってから選ぶ
――これまでの放送で印象的だったのはどの回ですか?
「家」の回ですね。「家を買うのと借りるのではどっちがいいんですかね?」っていう議論って、いろんなところでするじゃないですか。結局のところ拮抗(きっこう)してるというか、人によって、生活とか将来のプランに合わせて選ぶっていうのがいいっていうお話だったんですけど。そういうのを聞くと、得した気持ちになりますね。
あとは「ギャンブル」の回で、“損失回避性”(得た時よりも、失った時の方がつらさが大きいので、さらに大きな利益を得ようとしてしまい、損切りができない人間の心理を表す言葉)っていう考え方を習ったんです。
1回もらったもん返すのって嫌なんですよ、もともとは同じやのに。「こんだけ負けたら次勝てるやろ」って絶対思ってしまうんです。それを聞いた時に、失敗してるのって大体これやなと。
――その話を聞いて、又吉さん自身はどうされましたか?
生活プラス自分の性格に合わせて家買おうかなと思いました。というかもう買ったんですけど。番組内では「買え」とも「買うな」とも言ってなかったんですが、買った方が得っていう声の方がややでかいと思ってたんです。でも話を聞いていくと、そうでもなくて。買わなくても得するメリットも分かってきて。
確かに、買うとどんどん古くなっていくけど、買わなければその家賃で新しい家に住み続けることもできると、そういうのも面白いなと思いました。
デメリットがあるんだということを分かってて買うことで、後で知った時のショックがないというか、ちゃんとそれを踏まえた上で考えることができました。
理にかなっていても、感情に反していることは実践できない
――又吉さんは、知ったことは実践するタイプですか?
ほとんどのことは実践できると思います。ただ、例えば恋愛とか、絶対無理と分かってても、「好き」っていう気持ちは「あ、無理やから諦めよ」とはならないじゃないですか。引きずってしまうし、そこは迷い続けるしかない部分もあると思うんです。
そういうこと以外で、いろんな人の意見を聞いて判断したいなっていうことは、番組で学んで考えを整理できたなと思うんですけどね。
――認識や行動などで変わった部分はありますか?
番組の中で、こういう状況の時に僕がどういう行動をとるかっていう実験をすると、普通とは違う結果になることが多いんです。普通はこうなるけど、僕はこうなったっていう部分から自分の癖や特性が分かるので、そこ気を付けようと意識はしましたね。
ただ、もしこの番組を見て生き方を完全に変えてる人がおったら、そこまではやらなくていいと伝えたいです。自分のやり方がまずあって、有効に使えるものを活用していってもらえれば、毎日が楽しくなるんじゃないかと思いますね。
毎週水曜夜10.00-10.45
※再放送は毎週木曜夜0.30-1.15
6月28日(水)放送のテーマは「オイコノミア流“デリバティブ”超・超入門」。ゲストは平成ノブシコブシ・徳井健太