「人コワ」な物語は実体験を元に着想
――2作目の著書「変な絵」も33万部を突破。雨穴さんの作風は、「何かおかしい」も「変な家」「変な絵」も、人間の嫌な部分にフォーカスした、いわゆる「人コワ」作品ですが、どういうところから人の怖さを見つけていますか?
「人コワ」に限らずですが…自分が過去に体験したことの中で「これが怖かった」、人間関係の中で「こういう人が嫌だった」というのを思い出しています。たとえば学生時代、クラブ活動でトラブルがあったんですが、当事者が直接話し合い、ふたりとも謝って仲直りしたすぐ後に、片方の子が相手のいないところで悪口を言っていたんです。人の心の中はわからないと感じて怖いなと思いました。
――「変な家」は間取り図、「変な絵」は描かれた絵というキーアイテムを基に物語が紡がれます。こういった題材を思いつくきっかけは何でしょうか?
たとえば今回の「変な絵」は、貴志祐介さんの「黒い家」という小説の中に子供が書いた作文から精神分析をする場面があり、怖いなと思ったことがきっかけです。精神分析から謎解きをするというアイデアを考え、自分のオリジナリティを出すために、「バウムテスト」(一本の木を描かせて内面を判断する精神分析の手法)を取り入れてみようと思いました。
――ご自身が触れたコンテンツを参考に、オリジナリティの要素を足していくという発想が多いのでしょうか。
そうですね、そういう考え方が多いです。
――現在YouTubeの登録者数は約80万人、著書も2作連続30万部超えのヒットとなっていますが、動画制作や執筆の他にこれからやってみたいことはありますか?
趣味で音楽をやっているんですけど、それをもうちょっと形にしてみたいと思っています。
――「変な絵」でも作品をモチーフにした楽曲(「【組曲:変な絵】a Mother's Nocturne」)を作られていましたね。セルフメディアミックスというのは新しくて驚きました。
双葉社でYOASOBIさんの小説×音楽プロジェクトを担当されている方に「雨穴さんはYouTubeをやっていて、音楽もやっていて、小説も書いたから、その3つをミックスすると面白いものになるんじゃないか」とお声がけいただいたのですが、実際にやってみると、小説では描き切れなかった部分を補足するような形で音楽を作れて、効果があったと思っています。楽曲は今までも何曲か作ったのですが、もっといっぱい作りたいです。