声優としてTVアニメ『ラブライブ！サンシャイン!!』『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』などに出演、さらに映像作品や舞台俳優としても幅広く活躍する佐藤日向さん。お芝居や歌の表現とストイックに向き合う彼女を支えているのは、たくさんの本から受け取ってきた言葉の力。「佐藤日向の＃砂糖図書館」が、新たな本との出会いをお届けします。
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ハワイと聞いて思い浮かべるのは、リゾート地や日本人観光客の多さではないだろうか。
「ハワイに行くから良い思い出が必ず作れる」というわけではなく、旅行先での思い出作りが良いものになるかどうかは、その人の精神状態や行動次第なのだと思う。
今回紹介するのは、近藤史恵さんの『ホテル・ピーベリー』という作品だ。
ハワイで日本人夫婦が経営するホテルに、元教師の主人公や謎に包まれた客達が集まるところから、本作の物語は始まる。そのホテル内で死体が見つかり、不穏な空気がホテル内で漂う。死体が見つかる瞬間までは、まるで群像劇のような展開が繰り広げられているので、途中まではミステリー作品ということを忘れながら読んでいたが、後半にかけての種明かしには心に何かすっきりとしない引っかかりを残す後味があり、ハワイの描写の爽快感との対比が印象的な作品であった。
本作の主人公には一切の共感が出来る要素がないのに、主人公視点で描かれていることによって彼の異常さが薄れ、その不可解な思考回路がハワイの清々しさによって緩和されている。だが、ハワイののんびりとした空気感をも覆すくらい、どろっとした灰色のような空気感が常に作中に漂っているのは、主人公の根底にあるネガティブな部分が緻密に表現されているからで、私の知らないハワイがそこにはあった。
この作品の見どころは、初手は傷心旅行として3ヶ月間ハワイに滞在するひとりの男性の様子を緩やかに描いていると見せかけて、彼の異常性と殺人事件をスピーディーに描いている部分だと私は感じた。
そしてハワイという南国のリゾート地で、異国であるのに日本人同士が集まり、いざこざが起こる異様さもポイントだった。
旅行に行った時、不思議と人は「良い思い出を作ろう」と意識的に動きがちだが、それまで過ごしてきた日々や経験というのは、場所を変えたとしても"旅マジック"で誤魔化すことは出来ない。「旅先で素直に今見てる景色を目に焼き付けたい」「何十年か後に、あの時訪れたあの場所にもう一度行きたい」……そういった、いわゆる普通の感性を持ち続けられる人で居られるよう、私はまわりと接していきたいと思う。旅行を楽しめなくなった時が、佐藤日向としての魅力の限界を迎えた時だと、この小説を読んで感じた。このホテルの扉を通り抜けた先に、あなたにはどんなハワイの景色が映るだろうか。是非、試してみてほしい。
この記事はWEBザテレビジョン編集部が制作しています。
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佐藤日向(さとう・ひなた)
12月23日、新潟県生まれ。
2010年12月～2014年3月、アイドルユニット「さくら学院」のメンバーとして活動。卒業後、声優としての活動をスタート。主な出演作に『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』（星見純那役）、
『ラブライブ！サンシャイン‼︎』（鹿角理亞役）、『D4DJ』（福島ノア役）、『プロジェクトセカイ カラフルステージ！ feat. 初音ミク』（暁山瑞希役）、『ウマ娘 プリティーダービー』(ケイエスミラクル役)など。ニコニコチャンネル「佐藤さん家の日向ちゃん」毎月1回生配信中。
