奈央のときと同じように種は豊にもジュースをこぼしてしまう
種が申し訳無さそうにごめんなさいと謝ると、奈央はやっと種のほうを見て「平気だよ」と力なく笑う。重い沈黙の後、奈央は「穣には穣の人生があると思う。大学で待っているね」と言い残して去った。奈央の言葉に答えず、陰った表情の穣を見ているとこちらの方も辛くなってしまう。
一方、家族のことで豊も元気を無くしていた。夜にスーパーに寄ると偶然、穣と種に出会う。お互いにちょっと元気がないことを察する2人。同時期に家族のことで元気をなくしてる2人のシンクロ具合にも、それを感じ取る繊細さもやっぱり彼らは相性が良いと思える。
種の提案でお母さんの思い出のラーメン炒飯を穣の家で作って食べることに。3人で美味しいと食べていると種がまたジュースをこぼしてしまう。種がしおらしくごめんなさいと謝ると、豊は「全然、全然、洗えばいいから」とサラッと笑顔で受け流す。
そのやり取りを見て感じ入っているようすの穣。彼の表情を見て、こちらもわかるわかると頷ける。言葉でこそ表さないものの種の存在を疎ましく感じ、穣にもプレッシャーを感じさせる奈央と豊の対応のこの違い! 対比の描き方が上手い。豊は種が失敗しても咎めず、種を受け入れることは穣のことも肯定しているように感じさせる。やっぱり穣には豊が必要だと思えて胸が熱くなる。
穣がさらにごめんなと声をかけても豊は「ううん、全然」と種と着替えに行き、ほっと安堵のため息を付く穣がちょっと泣きそうになっているように見えて、こちらも嬉し涙がこみ上げてきた。Twitterでも「種くんに対する元カノと豊くんの差だよね…」「彼女の対応にモヤっとしていた分、豊の優しさが余計に心に染みるね」「さっきの穣の彼女と豊の種くんへの対応の違い。」「優しい世界すぎる」と豊の神対応への賛辞が寄せられていた。
◆構成・文=牧島史佳