監督・是枝裕和、脚本・坂元裕二の初タッグによる映画「怪物」の大ヒット御礼舞台あいさつが6月19日に都内で開催され、主演の安藤サクラ、永山瑛太、メガホンをとった是枝監督が登壇し、作品に寄せられた反響や、印象に残るシーンなどについて語った。
カンヌで脚本賞&クィア・パルム賞を受賞
同映画は、監督・是枝と脚本・坂元、音楽・坂本龍一さんという豪華なタッグで制作されたヒューマンドラマ。「第76回カンヌ国際映画祭」で坂元が脚本賞を受賞し、独立部門「クィア・パルム賞」と合わせて作品として2冠を獲得した話題作だ。
舞台は、息子を愛するシングルマザー、生徒思いの学校教師、無邪気な子どもたちが平穏な日常を送る大きな湖のある郊外の町。ある日、学校でケンカが起き、彼らの食い違う主張が次第に大人や社会、メディアを巻き込み、大事になっていく。そして、ある嵐の朝、子どもたちが忽然と姿を消す…という物語。安藤はシングルマザーの早織を、永山は早織の息子・湊(黒川想矢)とその同級生・依里(柊木陽太)らの担任教師である保利を演じている。
6月2日から全国で公開され、間もなく観客動員数100万人突破する勢いの今作。会場にも既に複数回見ているという観客が多いと知り、安藤は「え~!!すごいですね…」と仰天し、「私が聞いているラジオでも次々、皆さん『怪物』の話をされるのですごいんだなって。私よりご覧になられた皆さんのほうが、『怪物』の細かいことをご存知なのではないかと。自分より詳しい気がして、ちょっと今日しゃべるのが怖い気がしています(笑)」と、自身の元に届いているものも含め、あらためて反響の大きさに驚いていた。
僕自身も言葉にできない気持ち
また、永山も「本当に皆さんそれぞれ感じ方だったり、受け取り方が違っていて、特に2回以上見た方々が感想のニュアンスが違ってくるなという印象を受けました。あと一番多いのは『言葉にならない。だから会って話がしたい』というような連絡です」と、自身に寄せられた感想を。
続けて「今まで取材をずっとやってきた上で、(ネタバレ防止で)オブラートに包んで話さないといけなかった。でも、実際公開されてからは、余計にどういうふうにこちらから語っていいか分からなくなったというか、どういう言葉でこの映画の良さを…というのは、もうお客様のほうが理解されているのかなって気になって僕自身も言葉にできない気持ちではいます」と、事前のネタバレとはまた違った角度で話すのが難しくなっていることを伝えた。
一方、是枝監督も「あまりSNS向きじゃない、もっと長い文章で感想を伝えたいという感じですね」という反響も多いことを明かし、「あと、周りに結構若い監督たちが仲間として同じ空間にいるんですけど、彼らに言われているのは『いつもより演出に迷いがない』『編集のキレがいい』『もう自分で脚本を書かない方がいいんじゃないか』っていう…。温かいメッセージを頂いています」とポツリ。
すかさず安藤に「それを聞くとどんな気持ちになるんですか?」と問われ、是枝監督は「悔しい気持ちもなくはないんですけど、坂元さんとやったことを吸収して、次は自分で無駄のない脚本を書こうっていう気持ちに今はなっています。でも、自分で見ていても今回は『いい編集をしているな』って思っていたので、うれしいっちゃうれしいんですけど」と前向きな思いを吐露し、坂元とのタッグによる相乗効果は計り知れないことを感じさせた。
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