本日、7月13日(木)より放送開始となる新木曜ドラマ「ハヤブサ消防団」(テレビ朝日系、毎週木曜夜9:00〜9:54※初回は拡大スペシャル)。本作でテレビ朝日のドラマ初主演を果たす中村倫也の語りつくせない魅力を紹介する。
中村倫也の掴みどころがない魅力
俳優・中村倫也の魅力を語るのはかなり難しい。童顔なのに色気があり、クールに見えて意外とお茶目。どんな役にもなりきる演技力と、稀に拝聴できる繊細な歌声で人々の心を掴んで離さない。
……と、頭に浮かぶ彼の魅力は枚挙にいとまがないのだが、そのどれもが的を得ているようで得ていないような気がしてしまう。捉えようとすれば、上手く交わされ、そのくせ向こうは全て見透かしたかのような目をしている。それが、中村倫也という男だ。
今年の3月、好感度No.1といっても過言ではない日本テレビアナウンサー・水卜麻美との結婚を発表した中村。その一報が届いた瞬間、数多の女性が悲鳴を上げる幻聴が聞こえた気がした。きっと翌日、ショックで仕事を休んだ人もいたことだろう。
それくらい今や大人気で、コンスタントに映画やドラマに出演している中村だが、意外にも遅咲き。2005年に俳優デビューを果たしてから、2018年放送の連続テレビ小説「半分、青い。」(NHK総合)でブレイクを果たすまで、なんと13年もかかっている。それでも挫折することなく、映像作品はもちろん、舞台でも(特に残酷歌劇「ライチ☆光クラブ」のゼラ役は中村の魅力を余すことなく堪能できるので、何らかの形でぜひ観てほしい)着実にキャリアを積み上げてきた努力の人なのだ。諦めないでいてくれてありがとう、とお礼すら言いたくなる。
そんな、まだ中村の存在が世間に浸透しきっていない時期の注目作がTBS日曜劇場「下町ロケット」(2015年版)だ。7月から中村が主演を務める「ハヤブサ消防団」と同じく、池井戸潤原作の同ドラマは、宇宙科学開発機構の元研究員である主人公の佃航平(阿部寛)が町工場・佃製作所の社長となり、従業員と共に大企業へ立ち向かっていく物語。中村は、日本でも有数の大企業である帝国重工の若き技術者・浅木を演じた。帝国重工は佃製作所と敵対する組織だが、浅木は先入観なくフラットに物事を見る人。佃製作所の高い技術力を目の当たりにした時のキラキラとした瞳が印象的で、佃がピンチの時に自分の立場を投げ打って助太刀するキーパーソンとしても活躍した。癖のある役も難なくこなす中村だが、こういう雑味のない爽やかな人物も好演できるのである。
この作品で中村を知った方は、「ホリデイラブ」(テレビ朝日系)を観て驚いたことだろう。中村が演じたのは妻の里奈(松本まりか)に浮気された渡。オールバックに眼鏡のインテリ風な渡は普段からことあるごとに里奈を責め立てるモラハラ夫で、浅木を演じていた時の中村とはどうしても頭で結びつかない。それくらい観てるこちらまで手に汗握るような鬼畜ぶりを見せた中村。一方で渡は少しずつ自分の行動を省みるようになり、不器用ながらも子どもと向き合う姿がかわいいと話題に。普通あそこまでマイナスなところからイメージを回復させるのは難しいが、それを可能にしたのはやはり中村の繊細な演技の賜物である。
“ギャップで沼落ち”の天才！
優しいだけじゃなく、掴みどころのない雰囲気で女性を沼にハマらせる。そんな役を演じさせたら、中村の右に出るものはきっといない。その原点になっているのが、「半分、青い。」で演じた、ヒロインの鈴愛(永野芽郁)が恋に落ちる“マアくん”こと正人である。
正人は鈴愛の幼なじみである律(佐藤健)の大学の同級生だ。くるもの拒まず、去るもの追わずのスタイルで女性からモテまくってきた。そんな彼が自分にだけ本気になってくれる……という夢のようなシチュエーションを鈴愛とのやりとりを通じて届けてくれた中村。律との友情を取り、身を引いた暁には深刻なマアくんロスを引き起こすこととなる。
中村が演じた役はどうして、いつまでも心に住み着くのか。それは彼がその人の二面性やギャップを引き出す天才だからだ。「初めて恋をした日に読む話」(TBS系)で演じた元ヤン教師の山下は男気溢れる大人の男性だが、ヒロインの順子(深田恭子)には時折弱った一面を見せたり、彼女に会いたい一心で木を伝ってベランダから侵入したりと、絶妙に母性本能をくすぐってきた。計算してんだか、してないんだか見当がつかないギリギリのラインをいつも中村は攻めてくる。
「美食探偵 明智五郎」(日本テレビ系)の明智だって、きっと中村にしか演じられない。ワインレッドのスーツにループタイという前時代的なスタイルの探偵なんて漫画にしか登場しないような(実際、本作は東村アキコの漫画が原作)キャラを見事に乗りこなした中村。明智はこだわりが強く、一言でいえば変人だが、のちに助手となる苺(小芝風花)が文句を言いながらもついつい世話を焼いてしまうような部分があった。対して殺人鬼のマリア(小池栄子)といる時は色気が溢れ出すなど、同じ作品、同じ役でも色んな顔を見せて私たちを飽きさせない。
「ハヤブサ消防団」で演じる三島はどんなキャラ？
そんな中村が「ハヤブサ消防団」で演じるのは、亡き父の故郷である長閑な集落“ハヤブサ地区”に移住してきたスランプ気味の作家・三馬太郎。都会の生活に疲れ果てた三馬は田舎で穏やかな生活を送れると思っていたが、地域の消防団に入団させられてしまう。
そこで彼を待ち受けていたのは、連続放火騒動や住民の不審死など、不穏な事件の数々。「半沢直樹」「下町ロケット」「アキラとあきら」などのヒット作を世に送り出してきた池井戸潤が操るミステリーの世界に中村が導かれる。
出演にあたり、中村は「久しぶりにリアクターとして楽しめる撮影になりそうです。その土地のさまざまな人や自然、起こる出来事、すべてに対する反応の仕方で、三馬という人が見えてくるのではないかと思います」とコメントを発表していた。最初から全てを見せるのではなく、ちょっとずつその人の情報を小出しにして、観る者の視線を引きつける中村。今回、演じる三馬がどんなキャラクターになっているのか。最後まで目を離さず、その動向を追っていきたい。
■文／苫とり子
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