「なかなかの主になられたようじゃ」
再登場後も「舌先三寸で伊賀に潜り込んでタダ飯を食らっておりました」と、みずから“イカサマ師”キャラをアピールする正信だが、実は弱き民に寄り添う信念の人であることが第9回では描かれていた。
第9回では、一向宗徒を相手に戦を仕掛けた家康に向かって「過ちを犯したのは殿だ」と一刀両断。「民が仏にすがるのは、現世がつらいからじゃ。殿が民をラクにしてやれるなら、誰も仏にすがらずに済むんじゃ。そのために民は、お前に米をたらふく食わせているんじゃ。おのれはそれをなさずして民から救いの場を奪うとは何事じゃ!この大たわけが!」と強い言葉で非難したのだった。
そんな正信が第29回で目の当たりにしたのは、大鼠(松本まりか)が「殿がまともな暮らしができるようにしてくださった」と叫び、半蔵たちが「わしが家康じゃ!」と身代わりになろうとする姿。そして家康が、主君らしく堂々と「わしの首をやる。だから、ほかの者は見逃せ」と彼らを守ろうとする姿だった。
「身をもって伊賀者を助けようとする殿様など初めて見ました。なかなかの主になられたようじゃ」と家康に笑いかけた正信。その目に、家康はかつてとは別人のように映ったことだろう。正信の才気煥発さが描かれているようで、見終えてみれば家康の成長ぶりも印象深い回となった。