“物作りをして、形のあるものを世に残したい”という思いに駆られ、テレビ東京に入社。以降、「白ブリーフ」「人妻」といったサブカル的なネタの変遷を歴史ドキュメンタリー風に紹介する「ジョージ・ポットマンの平成史」(2011~2012年)や、無人カメラを前に街行く人々が思いの丈をぶつける「カメラ置いとくんで、一言どうぞ~街中に、カメラ放置してみました~」(2015年)といった、テレビ東京ならではのバラエティー番組の数々を、まさに“世に残してきた”高橋弘樹氏。現在も、終電を逃した人に密着インタビューを敢行する“人生のぞき見バラエティー”「家、ついて行ってイイですか?」のプロデュース&演出を手掛ける彼が、“一般人”をフィーチャーした番組を作り続ける理由とは? さらに、テレビマンとしての信条や今後の展望などを聞いた。
『TVチャンピオン』で、労力を掛けなければ面白い番組を作ることはできないんだと学びました
──高橋さんがテレビ東京に入社されて、一番最初に携わった番組は?
「本格的という意味では『TVチャンピオン』(1992~2006年)ですね。もちろん最初はADで、『足を使って調べてこい』ということを徹底的に教えられました。スーパーの袋詰めがうまい人が競い合う『詰め放題選手権』という企画をやったときは、当然ながらそんな選手なんていないので(笑)、千葉や練馬のスーパーに張り込んで、上手な人を探してスカウトしたんですよ。バラエティー番組って、思っていた以上にゼロから手作りで作っていくんだなぁと強く感じましたね。『TVチャンピオン』という番組からは、しっかりと労力を掛けなければ面白い番組を作ることはできないんだ、ということを学んだ気がします」
──高橋さんの中で、“この出会いは大きかった”と思う、番組、もしくは人物は?
「『空から日本を見てみよう』(2009~2011年テレビ東京系)についていた時期があるんですが、当時プロデューサーだった永井(宏明)さんは、僕の師匠的な方です。永井さんは制作会社からテレ東に移ってきた人なんですけど、とにかく番組のクオリティーと面白さをとことん追求する人で。撮影でズームインやズームアウト、パン(カメラを上下左右に振る)するときも、なぜ今、その手法を使うのか、一つ一つロジカルに突き詰めるんですよ。一度、僕がロケで撮ってきた映像について、なぜそういうカメラワークにしたのか説明を求められたんですが、僕は理由なく撮っていたから、すごく怒られて。それ以来、カット一つにもきちんと意味を考えるようになりました。
正直、そんなことを考えなくても視聴率を獲っている番組はいっぱいあります。でも僕は、カメラワーク一つ、ナレーション一つで番組は面白くなるんだということを、永井さんに調教されたというか(笑)。その考え方が癖として染み付いてるんです。いまだに、プライベートで旅行に行ったときでも、どこが最も景色がきれいに撮れるだろうとか、どこからズームアウトするのが最適だろうとか考えたりしちゃいますからね」