加藤拓也氏が監督・脚本を務めるドラマイズム「滅相も無い」(毎週火曜夜1:28-1:58ほか、TBSほか)が現在放送中。同作は、巨大な“穴”が現れた日本を舞台に、その“穴”に入るか悩む8人の男女と教祖の姿を描く、映像×舞台×SF×アニメーションが融合した完全オリジナルのSF群像劇。
“穴”に入るか悩む8人の男女を中川大志、染谷将太、上白石萌歌、森田想、古舘寛治、平原テツ、中嶋朋子、窪田正孝が、“穴”を神とする団体の教祖を堤真一が演じ、津田健次郎がナレーションを務めている。
このたび、WEBザテレビジョンでは、同作のプロデューサーを務める上浦侑奈氏、戸倉亮爾氏、林田むつみ氏にインタビューを実施。作品への思いや制作裏話、視聴者からの反響について思うことなどを聞いた。
「高尚で重厚に見え得るのではないかという勝手な不安があった」
――まずは、完成した映像を見た率直な感想をお聞かせください。
戸倉:脚本の初稿があがって、みんなで内容についてあれこれ話し合おうかというときに、加藤さんから「まずは本読みをしたいです」とリクエストがあったんです。加藤さんが信頼を寄せている(最終的にご出演していただいたみなさんとは違う)役者さんたちに集まっていただき、加藤さんの演出を交えながら本読みをしました。
これは、少なくとも私の身のまわりの現場ではあまり無いことでしたが、自分のペースで勝手に読んでしまう読み手側も本の意図とリズムを理解するし、加藤さん自身も書いた言葉を全て音として聞きたいということで、とても合理的で有意義な機会でした。
上浦:本作はともすれば、高尚で重厚に見え得るのではないかという勝手な不安が当初少なからずあったんです。ですが、その本読みをしていただいた際に、不安は一気に吹き飛びました。ずっと明るく楽しく見られる作品になりそうだなと思いワクワクしたのを覚えています。
――この作品を打ち出そうと思ったきっかけを教えてください。
戸倉:僕は過去に加藤さんとお仕事をご一緒したことがあったのですが、それ以降も、もう一度、それも監督・脚本という形でご一緒したいと思っていましたし、数年間、そんな思いを加藤さんにも伝えていました。2023年のはじめ、上浦さんに企画のご相談をする機会ができて、最初に「加藤拓也さんお好きですか?」と聞いたところ、「大好きです!」と即答されて。
上浦:戸倉さんからご提案があった際、私もすごく興味があったので「今すぐ会いたいです」とお伝えして、2023年の2月に「博士の愛した数式」の公演で加藤さんが長野・松本にいらっしゃるということで、東京に戻られるのを待たずに押し掛けました。
そこでお会いしてから、加藤さんとの企画の開発がスタートして。ある日、加藤さんから「日本に穴が開く」というアイデアをいただいた際は、私たちにとっては突拍子もないアイデアでしたが、「めちゃくちゃ面白そう!」と。でも、実はそこから今の話になるまでには紆余曲折あって、全然違うホラーの話になったりもしていたんです(笑)。
戸倉:企画が動き出した当初から、上浦さんとは「“加藤拓也の塊”みたいなものをつくりたいですね」という話をしていました。なので、根幹の部分で言うと、一番大事にしていたのは“テレビドラマという世界で加藤さんのやりたいことを実現すること”でした。
私が敬愛している加藤さんの作劇や演出は、ともするとマジョリティーを優先する方針においては表現を丸められがちなのですが、MBSさんのドラマづくりの方針はそうではないと思っていましたし、なにより今回は上浦さんが一番の味方だったので、このような作品が実現しました。
「加藤さんの世界観が大好きだからこそ、心中したかった」
――物語をつくる上で、加藤監督とは具体的にどのような打ち合わせをされましたか?
上浦:今の深夜ドラマは、人気の原作にすてきなクリエイターとキャストがマッチングして成立していくものがほとんどですが、大前提として、私は加藤さんとやる上ではそういったことはあまりしたくなかったんです。加藤さんの世界観が大好きだからこそ、心中したかったというか。
深夜ドラマなので、きっと予算のところで制限をおかけすることになるだろうとは思いましたが、逆に予算以外の部分ではうんと自由に、存分にやっていただきたいという思いでした。
そういう意味でも、オリジナル作品をやるということが大前提にあって、オリジナルでやるということは、結局は“加藤拓也の塊”の話なので、最終的なアイデアや物語に関しては、基本的に全て加藤さんに委ねました。