演技に“開眼”
そんな彼女が大きな注目を浴びたのは2016年。朝ドラ「とと姉ちゃん」(NHK総合ほか)でヒロインの妹役を好演し、鮮烈な印象を与えると、同年公開された映画「湯を沸かすほどの熱い愛」の演技が各所で絶賛された。“伏線”はあった。
前年に公開された「トイレのピエタ」のオーディションのときだ。松永大司監督に「そんな芝居なら俺にもできる」と言われてしまったのだ。この頃は、「怒っている」という表現を求められたときにそう“見える”芝居をすることが正解だと思っていた。だが、それは表面的な表現だと監督の指摘で気付いたという(「otocoto」2023年12月8日)。そこで演技に“開眼”した。一方で、この映画で演じた真衣という役には「強烈に引きずられて」しまったという(「CINRA」2023年12月8日)。
よく「憑依する」「役に入り込む」などと称されることがあるが、当時はそうすることで「自分に安心したかった」だけで、現在それは「不可能に近いのではないか」と思うようになったという(同)。 そこには「人のことはわからない」という実感がある。「理解できたつもりでいても、人のことはどこまでもわからなくて他者は他者なんだって。そうあることを受け止めて、それでも関わろうとしたり、想像を続けるってことが、他者とか役と繋がっていられる手段かな」(「スイッチインタビュー」前出)と。