子どもたちが立てこもり、島は家に火をつけられる
立ち退き、そして“街”の仮設住宅の解体の日が近づき、“街”のシンボルである大漁旗にみんながメッセージを書き込んだりする感傷的なシーンもあるが、それだけではない。
13年の歴史がある“街”に対するいろいろな思いが交錯し、いろいろなことが同時多発的に起こった。一つは、良太郎の子どもたちがかつ子を人質にして校舎に立てこもるという事件。仮設住宅ではあるが、そこで生まれた子どもたちにとっては“仮”ではなく、自分たちの生まれ育った場所。そこを離れたくないという気持ちが、そういう行動に出たきっかけとなったようだ。子どもたちは自分の思いと消化器をぶちまけたりして、なんとか収めることができた。
六ちゃんが、解体用の重機に乗り込み、いつもの架空のショベルカーじゃなく、実際のショベルカーで街を迷走。いろいろなものを壊して回った。他にも、住人同士が日頃のうっぷんを晴らすかのように小競り合いが起きたりしたが、益夫(増子)が島(藤井)の家に火をつけるという騒動も勃発。家の中に島のワイフ(LiLiCo)がいたが、島が煙の立ち込める家の中に飛び込んで無事救出。逆に、島はワイフにおんぶされて外に出てきた。
一年しか住んでいない半助も感情が爆発
仮設住宅に一年しか住んでいない半助。しかも、住人たちのことを報告してお金をもらったり、スパイ的なこともやっていたが、やっぱり愛着が湧いていたようで、「ここより良いとこなんかないと思うんだよ」と本音を吐露。
「おとなしく出ていくか、やかましく出ていくか」と考えていたかと思ったら、解体作業員が大漁旗を乱暴に回収しようとしているのが見えて、「ふざけんなよ!」と飛び蹴りを喰らわせたりして大暴れ。
その様子は解体の様子を取材に来ていたワイドショーのカメラに収められ、番組で繰り返し放送された。
仮設住宅が解体され、“街”が消滅した後、住民たちはそれぞれ別の生活をスタートさせていた。「街の住人だったことを決して口外しない」「どこからですれ違っても絶対に声をかけない」というのが、元住人たちの間の暗黙のルールになっていた。過去を消して、社会に溶け込んでいる仲間の邪魔をしないために。
そういうルールがあると、どこか寂しい感じもするが、この暗黙のルールに関しては、そこまできっちりしたものではなかったのではないかと思われる。
ラストシーンで、カフェで半助が街での出来事を書いた原稿を編集者に読んでもらっているが、窓の向こうにタツヤがいて、半助に合図を送っている。半助の作品は編集者からボツをくらっていたが、背広姿のタツヤは大漁旗の切れ端で作ったネクタイをしていて、半助も大漁旗から作った半ズボンを履いている。
ここに、確かに“街”が存在したことが確認できて、視聴者をホッとした気持ちにさせてくれるものがあった。SNSにも「最後は大暴れだったけど、涙が止まらなかった」「溜まったものが爆発してお祭りみたいだった」「かつ子が『最高!』と叫んだところで涙が出てきた」「重たいテーマでもあったけど、スカッとする気持ちにもなれた」といった共感や感動の声が多く見られたように、いろいろと考えさせられる作品だった。
◆文=ザテレビジョンドラマ部
https://www.disneyplus.com/ja-jp/series/a-town-without-seasons/
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