完落ちした小暮が古畑に「君に拳銃は必要ない」
これまで古畑のエピソードは、痴話喧嘩がこじれて殺しを犯してしまったとか、身近な人間との関係が崩れて殺人に発展してしまったなどという、ゲスト出演する犯人役にも人間味を感じたり視聴者も同情してしまうようなキャラクターが多く見られた。
しかし、最終話の小暮は、殺しの動機は孫娘を失った悲しみと恨みで、犯行に使った拳銃も暴力団が使うタイプのそれであり、殺人犯としてのラスボス感と凄みが半端ではない。
古畑としても先輩刑事のアリバイ崩しということで、普段よりも緊張感があったのだろう。小暮を挑発するような無駄な尋問はせず、ほころびをひとつずつ丁寧に暴いていくといった慎重さが見えた。古畑はいわゆる普通の刑事ではない孤高の変わり者なため、グループ行動で捜査にあたるようなことはしない。
今回、警察署内を歩く古畑が映るシーンがあるが、署内にいる姿すら貴重なのである。そればかりか、張り込みや麻薬捜査、銃撃戦など刑事ドラマであるあるな光景が繰り広げられ、古畑シリーズにしては異色の回といえる。
最終的にアリバイを崩されて完落ちした小暮は「古畑くん、納得いったよ。君に拳銃は必要ない」と告げ、古畑は「最高の褒め言葉です」と締めた。「古畑任三郎」シリーズがこのあとも3シリーズほか、スペシャル回も続く名作となっていくのにふさわしい、小粋なラストである。
この記事はWEBザテレビジョン編集部が制作しています。
「警部補・古畑任三郎 第1シリーズ」
脚本:三谷幸喜
企画:石原 隆、鈴木専哉(フジテレビ)
プロデュース:関口静夫(共同テレビ)
音楽:本間勇輔
演出:星護、河野圭太、松田秀知(共同テレビ)
制作:フジテレビ/共同テレビ