―――旅行はご自身でも行かれますか。
そうですね、行きますけど大体仕事です（笑）。でも日常とか現実的なものから解放されるという意味では、メリハリがつくし、すごく好きですね。
―――ご自身の体験も影響したり、投影されていますか？
自分が実際に行った所が多いので、自分が見たものや聞いたものを生かそうと思いました。
―――旅の経験で印象的だった場所はどこですか？
住んでみたいなと思ったのはパリですね。人がすごく良かったです。フランス人は冷たいってよく言われますけど、行ってみたらみんなすごく優しくて。フランスではカキを食べて倒れたんですけど（笑）。周りの人がとても親切にしてくれました。街の感じもちょっと東京に近いというか、ちょっと寒々しい空気とか、少し曇った感じの雰囲気に親しみを持てました。あと、フランスには仕事で行ったんですが、向こうで話したジャーナリストの方や編集者、作家さんたちはすごく小説に対して理解があるという印象を受けました。日本の小説って翻訳されると全然関係ないのに芸者の表紙とかになったりするじゃないですか。ちょっとうがった見方で分析されたり、宗教的な価値観に当てはめた考え方で話されることが多くて、それが結構憂鬱なんですけど、フランスでは、俗っぽい見方はせず、ちゃんと文学として正統な意見や判断をしてくれているように感じたので、すごく居心地が良かったです。
―――「憂鬱のパリ」の中で、主人公が街中を歩いていると、なぜか分からないけれど周囲に振り返られるというエピソードがありますが、金原さんご自身が経験されたことですよね？ その理由は分かったんでしょうか？
分からなかったです。何か変だったんでしょう （笑）。イタリアに行った時にも結構見られて、それは拒食で痩せていたからなんですよ。歩いていると、「えっ!?」って幽霊を見たかのような顔をする人もいて（笑）。一緒にいた編集者の人たちも「あれはひどいよね」と言ってました。でも、フランスに行った時はそんなに痩せてなかったし、冬だったので着込んでいたし、そもそも日本人女性っていうのが向こうでは割と珍しいんじゃないかなと…。分かりませんが。
―――プライベートで1人旅に行かれることも？
1人では行ったことないんです。
―――てっきりベテランかと（笑）。
いや（笑）。一人で行ったら食事、スパ、プール、とホテル内で終わってしまうと思います。
―――趣味はありますか？
割と無趣味なんです。映画見たり、ショッピングしたりはしてますけど、これぞっていうものはないんですよね。ピアスとネイルっていうのはずっと続けていますけど、そのくらいですね。
―――ファッションセンスも素晴らしくて、そういった面でも女性があこがれる魅力をお持ちです。
常に小説を書いているじゃないですか。小説を書いて、小説を読んで、小説について考えてってずっとやっているので、そういう生活の中で、自分の外見を気にしなくなったら、多分どんどん引きこもってしまうというか、ダメになっていくと思うんです。1つの客観性を失わないための手段として、買い物に行ったり、化粧をしたりネイルをしたりと、そういう面を意識した生活もした方がいいだろうなと思っています。
―――最後に今後の取り組みを教えてください。
「新潮」(新潮社）の新年号から「マザーズ」という小説の連載を始めました。母、母性、というテーマで、初めて家庭という舞台に臨んでいます。しばらくはこちらに没頭すると思います。
この記事はWEBザテレビジョン編集部が制作しています。
著：金原ひとみ
発売中 1470円（税込） 角川書店
