キム・スヒョンが主演を務める韓流ドラマシリーズ「太陽を抱く月」(Huluにて配信中)。2012年に全20話が放送された大人気ドラマシリーズである同作は、朝鮮王朝の架空の時代に繰り広げられる宮中ラブストーリーを描いく。第7話では王として政治を取り仕切るイ・フォン(キム・スヒョン)が再び出会った少女、そしてヤンミョングン(チョン・イル)との再会について振り返る(以下、ネタバレを含みます)
行幸に訪れた先でイ・フォンが目にしたもの
大人になったホ・ヨヌ(ハン・ガイン)、ソル(ユン・スンア)、チャン・ノギョン(チョン・ミソン)、そしてチャン・ノギョンの従者チャンシルは港を訪れていた。「もう戻りなさい」というチャン・ノギョンの言葉に、「一緒に行けない分、お見送りをさせてください」と答えるホ・ヨヌ。チャン・ノギョンは彼女に「見知らぬ者が訪ねて来たら必ず逃げなさい。絶対気に留めたりせず、縁などは築かないことよ」と真剣な表情で警告していると、港に1隻の船がやってくる。道士として呼ばれたチャン・ノギョンが乗る船だ。
その船で入れ違いに降りてきたのが、ヤンミョングンだった。港にいる人の多さに驚いて同乗していた男と会話していると、人が多いのは王様の行幸をみんなが見に来ていると知る。心中で「ヨヌ、王様に会わせたいのか」とこぼすヤンミョングン。港でホ・ヨヌらが話している所にすれ違ったものの、大きく成長したホ・ヨヌには気づかずに歩いて行ってしまうのだった。
一方行幸のためキム・ジェウン(ソン・ジェリム)、ヒョンソンらを連れ、御輿に乗って村のそばまで来ていたイ・フォン。御輿の正面を覆う布を外すように命じ、「寒さの中で待つ民衆を落胆させられない」と強い意志を見せる。ヒョンソンは笑顔を浮かべるようにと進言するのだが、「わざわざ笑顔など作らなくても、真の美男子は表情に左右されん」と冗談を飛ばす。気心の知れた従者たちが笑顔を浮かべるのを見て、イ・フォンも笑って「急がないと日が暮れるぞ」と出発を命じる。
チャン・ノギョンを見送ったホ・ヨヌらは、王様の行幸を見ようと列に並んでいた。しかしホ・ヨヌの前に並んでいた母子が身なりを理由に、門番の男に参列を拒まれてしまう。食い下がる母親を乱暴に振り払う男へ、抗議するホ・ヨヌ。「身分の低い者は門前払いを食らうなんて法はありません」と言い募ると、男は彼女を護衛するソルもろとも口汚く罵る。しかし巫女(ムニョ)であると名乗ったホ・ヨヌは、男の抱えている余人が知るはずのない事情を次々に指摘していく。
図星を言い当てられて激昂する男だったが、その騒ぎに乗じて強引に行幸を見に行く者たちによって騒ぎはうやむやに。落ち着ける所まで進んでから、霊力を持たないホ・ヨヌが知らないはずの男の情報を言い当てられたのはなぜかと問う。しかしホ・ヨヌが「論理的に考えたの」「昼なのにお酒臭かったし」と種明かしをすると、ソルは「論理的解釈で占い師になれます」と呆れまじりに感心するのだった。
期せずして、ヤンミョングン、ホ・ヨヌ、イ・フォンが行幸の瞬間一堂に会す。行幸に参加していたヤンミョングンとホ・ヨヌだったが、ホ・ヨヌのそばにいつかと同じ蝶々が飛んでくる。蝶々を愛で追っているうちに、立ち上がってしまったホ・ヨヌ。
そのままふとイ・フォンの姿を直接目にしたホ・ヨヌに、言い知れぬ感情が沸き上がってくる。目に涙を浮かべながら立ち尽くしていた彼女を、目立ち過ぎてしまわないようにソルが手を取ってその場を後にしようと駆け出す。しかしそれを怪しんだイ・フォンの部下らは2人を追って行き、行幸は1度中断されることに。
追手から逃れる最中、覚えていないはずの記憶がフラッシュバックするホ・ヨヌ。追ってから逃れたところで、再び誰かに手を引かれて追手から逃げる記憶が脳裏にひらめく。イ・フォンとの出会いの記憶と知らず悩むホ・ヨヌは、困惑しきりだった。
小雨に導かれるようにして出会う太陽と月
湯浴みするイ・フォンは、不満げな表情を隠そうともしない。そばに仕えていたヒョンソンが理由を問うと、イ・フォンは行幸に訪れていた者たちが一様に身綺麗だったことを気にしていた。「ぼろを着ていた者は皆無だ」「まさに天下太平の世で私は優れた君主に違いない」と皮肉っぽくつぶやくイ・フォン。行幸の見学に並ぶ人間が身分や服装で選別されていたことを、見抜いていたのだ。
ヒョンソンを冗談で追い出すと、浴室にはキム・ジェウンとイ・フォンだけが残る。「やっと2人になれたな」とイ・フォンがつぶやくと、2人は浴室を抜け出して村の奥へ。すると先程とまでとはまったく身なりの異なる者、物乞いをする者、家もなく震える子どもたち、両親の代わりに必死に妹を養う兄…あまりにも過酷な現状を目の当たりにしたイ・フォンは、心ばかりの施しをする。
そうして村を見て回る2人をつけまわしている、領議政の手のものがいることに気付いたイ・フォン。「少し遊んでやろうか?」と笑って全力で駆け出すと、そのまま完全に追手をまいてしまう。「なんと報告するのやら」と高らかに笑うイ・フォンは、小雨が降ってきたことに気付いて「ヨヌが来るのだろうか」と物思わしげにつぶやいた。
しかしそんなイ・フォンの前に、幼い頃のホ・ヨヌの幻影が現れる。微笑み、走り去っていくその姿に目を見開いたイ・フォンは慌ててその後を追う。ホ・ヨヌの幻影を追って森に迷い込んだイ・フォンとキム・ジェウン。深い霧に包まれた場所に立っている2人の前に、月の輝きとともに再びホ・ヨヌの幻影が現れる。
「お待ちしていました。遅いですよ」と語る幻影は、紛れもなくイ・フォンが愛したホ・ヨヌの姿。しかし次の瞬間には、その幻は大きく成長したホ・ヨヌへ入れ替わる。チャン・ノギョンを迎えに出たホ・ヨヌが、イ・フォンと運命の再会を果たしたのだ。
相手が王であると知っていながら、迷った2人を家に招き入れたホ・ヨヌ。食事を用意して2人に振る舞うが、食器を使う主が1人のため食器が不足していた。謝罪して下がろうとするホ・ヨヌを、イ・フォンは引き留める。主とは誰なのか、雨の中で誰を待っていたのかと問うと、ホ・ヨヌは「神母様です」と答えた。
会話を続けるなかで、イ・フォンの頭にホ・ヨヌとの記憶が浮かぶ。「ありえない。死んだはずだ。似ているだけだ、これは夢だ、目の錯覚だ。思慕の念が私を惑わせている」そう心中で自分を強引に納得させると、振る舞われていた酒を飲むイ・フォン。
そのままキム・ジェウンにも酒を勧めるが、護衛の任があるキム・ジェウンはイ・フォンの盃を固辞しようとする。するとホ・ヨヌはキム・ジェウンに「得体の知れぬ女から酒を出されたら毒見をすべきです」と進言。明らかにイ・フォンが高い身分…王だとわかっての発言に、イ・フォンはホ・ヨヌの腕を掴んで「なぜ分かった?私が王だと、なぜ知っている」と問い詰める。
以前に会ったかと聞いても、縁などないと答えるホ・ヨヌ。本当に巫女なのか、とイ・フォンの追及は止まらない。「なぜ王だと分かった?早く答えろ」というイ・フォンの言葉に「行幸の時に拝見しました」と答えたところで、ようやくイ・フォンの心が落ち着く。ずっと掴んでいた手を放し、「雨が止んだ」とつぶやくイ・フォン。
別れ際、名前を聞かれても名はないと答えるホ・ヨヌ。人との縁を避けるために名を持たず、適当に呼ばれていると答えたホ・ヨヌに、イ・フォンは「この出会いも縁だ。私が…ウォルと名付けよう。温かい酒への礼だと思ってくれ」と告げて家を後にする。ホ・ヨヌは噛み締めるようにウォルという名前をつぶやき、「やっと私にも名が付いたわ」とこぼすのだった。
NHKエンタープライズ