火野正平、里見浩太朗…名優が魅せた神回
――これまでの放送で、印象的だったお酒や放送回があれば教えていただけますか?
松尾:僕が回として印象に残っているのは、火野正平さんが出演された時です。お酒は、“ジョニ黒”だったかな。火野正平さんがゲストだった回はすごく火野さんにシビれた記憶が残っていて、好きなエピソードですね。今年(2024年)、お亡くなりになったので余計に印象深いです。
中村:僕は里見浩太朗さんがいらっしゃった回です。サロンというお高いシャンパンを開けてサーブするのですが、全部つながったワンカット。「これは幾らだ」と震える世界なので、本当にあれは緊張を通り越してものすごい集中力で演じたなと…。すごくうまくいったのもあって、印象深いですよ。
松尾:里見さんのようなベテランの人にも長台詞を割らずにワンカットでやってもらっていて、それもすごいなと思って。あまり現代劇の印象がなかったのですが、バシッと決めている里見さんの姿にはみんなシビれましたね。
中村:素晴らしかった。あんなに自然体で、しかもすごい深い内容を演じられて「さすがだなあ」と。
松尾:そのあとに梅雀さんがしゃべるとき、「(失敗できないと思って)すごい緊張するやろな」と思って見ていました(笑)。「俺なら絶対に嫌」と思って。
中村:里見さんと僕はずいぶん共演しているので、妙な緊張はなかったですよ。やっぱりサロンを注ぐときが一番緊張しました。あのとき、現場には2本しかなかったのかな?なにしろ1本何十万ですよ。だから、本当に緊張しました。
松尾:ありましたね、サロン…。泡が出るから注ぐのが難しいんですよね。一番高いくらいですかね、いままで扱ったお酒のなかで。
中村:いままでで一番高い。
――川原さんといえば、お酒好きとうかがっています。サロンのようなお酒も嗜まれますか?
川原:僕はお二方と比べて、それほどでも…。お酒を飲むのは好きなのですが、そんなに高価なものはいただきません。量を飲みますんで、高いのばかりは飲めない。
「おばんでやす」で通じるバーの世界
――2015年から現在まで番組が続いていることに関してはどう感じていますか?
中村:原作は膨大な量があるし、日本中のバーテンダーのバイブルと言われている作品です。お話をいただいたときに「すごいぞ」と思ったので、「絶対に続けなきゃ」と思っていました。最初のうちは大苦戦したのですが、そういう回でも意外とファンの方にも受け入れていただけて…。「あの回は印象的でした」と、いろいろなバーテンダーの方から言われたことが嬉しかったです。
皆さん、すり減るほど原作漫画を読んでいるわけじゃないですか。そのなかで僕が登場したら「雰囲気が違うだろ」と感じられるかと思っていたので、そうではなかったのが余計に嬉しかったですね。
――お酒の作り方や動作なども上達している感じはありますか?
中村:撮影が1年ずつ空くので、上達したつもりでも「久しぶりだ、うまくいかないな」というときはありますね。
――撮影の度に練習し、思い出しながらという感じでしょうか?
中村:そうです。2015年のスタート時、バーテンダーセットをいただいて練習をしていたんですよ。
松尾:僕はこの作品で色んなお酒を飲むことができ、洋酒をしっかりと知ることができました。お客さんとしてバーに行くと注文するときも緊張してしまうのですが、お店の人から「ウーロン茶割ですか?」と聞かれるようになりました。そういうやり取りがあると、緊張もほぐれますね。
お店に電話で予約するときに名前を言わなくても、僕が演じる「松っちゃん」のあいさつ「おばんでやす」と言うだけで「松尾からだな」と通じるお店も増えてきました。こういうことがあるから、もっと全国のバーマンに観てもらいたいですね。
中村:作中で松ちゃん(松尾が演じているキャラクター)が飲むウイスキーのウーロン茶割って、意外に美味しいんですよね。
松尾:あれは黒ウーロン茶なんですよ。僕も自分で作ってみたんですが、やっぱりプロが作るものは違いますね。
中村:「グレンリベット」の水割りを扱う回があったのですが、家で作って「本当に難しい」という気持ちを味わいました。ラストに「追いウイスキー」をやって師匠に褒められる…というストーリーなので、それを真似たら途端に形になって。それ以来、グレンリベットの水割りは得意になったし、ソーダ割はウチの娘が作って母親に飲ませています。
川原:僕はあんまり思い出せないです(笑)。2人は熱量がすごいなと思って聞いていました。
でも、お酒の飲む種類などは変わりましたね。若いときは焼酎を色んなもので割って飲むことが多かったのですが、大人になってからはワインも飲むようになりました。そしてこの番組に出ることになってからは、スコッチなんかも買って飲むようになりましたよ。グレンモーレンジとか。作品を通して、お酒の裾野が広がりましたね。
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12月27日(金)に放送される「BARレモン・ハート年末スペシャル2024」では、新作「私のスピリッツ」「お土産を手に」のほかに旧作2本を公開。田山涼成・平山あやが出演する「老猫の仕事」と、2024年11月に世を去った俳優・火野正平をしのび、松尾も印象深いと挙げていた「グッバイ ジョニー」をアンコール放送する。