ミスターパーフェクト俳優・沢村一樹の心に刻まれているデビュー当時の言葉とは!?
本当の自分じゃない“自分”が売れても楽しくない
当時の世間からのイメージは、モデル出身の爽やか&真面目な好青年。パーフェクトなルックスが逆に個性のある役を遠ざけたのか、ヒロインの恋路を途中でかき回す役が続き、決して最終的に結ばれる、という役ではなかった。
「そう、結ばれないんですよね! 俳優業を最初は意気込んでやっていたんですけれど、ずっとそういう役が続いたので、それは僕自身に問題があったんでしょうけれど、だんだん飽きてきて…そこで生まれたのが“エロ男爵”ですよ」
'00 年代に入りしばらくすると、それまで出していなかったキャラが登場してくるのだ。
「当時のマネジャーからは、そういう話をテレビでするなって、よく言われていたんですよ。でも“沢村一樹”という人を演じている自分が7割くらいで、本音で話しているのが3割くらいだったのが息苦しくて。本当の自分じゃない自分が売れても楽しくないし、いいや、向いていないんだったら辞めようって、そのときは本当に思っていました」
だがこの登場は大成功を収め、バラエティーに引っ張りダコになった沢村は、本業の方でも役の幅をぐんと広げる。その端境期に、のべ9年にわたり演じていた「浅見光彦シリーズ」('98 ~'12年TBS系)では、番組開始当初と後半で、世間から抱かれるイメージが全く異なるという事態に。
「正直、浅見光彦役が決まってからは、大切にしなきゃいけないなってうのは思っていましたよ。素の僕とは真逆の人間なので(笑)。でも、それまで自分を演じていた経験があったから、“アナ雪”のお姉ちゃん(エルサ)が、♪レリゴーレリゴーって歌うじゃないですか。ああいう気分でしたね! ただあまりにもいろんな扉を開き過ぎて、何だかもう、閉められない状態にまでなってしまいましたが(笑)」
コントでの当たり役が役者業での幅を広げていく
開いた扉は沢村に、伝説のコント番組「サラリーマンNEO」('06 ~'11年NHK総合)でのセクスィー部長・色香恋次郎という前代未聞の“当たり役”まで授ける。
「浅見光彦シリーズとセクスィー部長が同時でしたからね。全然違う、対照的な役だったので、僕の中ではむしろそのスイッチの切り替えをすごく楽しめる時期でしたね」
セクスィー部長は沢村の代名詞になり、ファン層も拡大。それからの彼はいわば、向かうところ敵なし。主演作も増え、病院の改革に静かに燃える男・相良浩介を演じた「DOCTORS―」シリーズ('11年ほかテレビ朝日系)は現在3シーズンを数える人気シリーズに成長した。
「これは、記者会見で『エロトークを完全に封印します』と宣言した初めての作品じゃないかな。ま、結局現場で少ししてましたけどね(笑)。このシリーズは僕の中ではまだ終わっていなくて、またやりたいんですよねぇ。『白衣が似合う男ランキング』の1位を取りたい! 『ヒルナンデス!』(日本テレビ系)で2位だったのが悔しくて(笑)。それに、これは脚本の福田靖さんの腕なんですが、病院を良くするという目的のために手段を選ばず、意地悪なことも平気でできる相良という男がカッコ良くてね。全然成長しない敵役の卓ちゃん(高嶋政伸)とのコンビも楽しいんですよね」
また'15 年には「偽装の夫婦」(日本テレビ系)で母親を安心させるために天海祐希演じるヒロインと偽装結婚をする同性愛者の男性を演じ、各方面で話題になった。
「コメディーなんで、コミカルに演じようとはしていたんですが、同性愛者の方々を応援する役回りだというのも意識して、心して演じていました。後にゲイの方々とお話する機会があったのですが『全然できてなかった』ってツッコまれちゃいましたよ(苦笑)。でもまぁ、このドラマを楽しく見ていてはくれたみたいだったので、役者としてはそれが一番良かったかなと、今では思っています」