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「NHK1.5チャンネル」編集部員に聞く!第2弾“狂気とカオス”な「ガッテン!アニメ」はどうして生まれた?

2017/11/02 12:00

科学番組担当の長谷英里子氏(左)と、編集長の小国士朗氏(右)
科学番組担当の長谷英里子氏(左)と、編集長の小国士朗氏(右)


スベったりもしたけれど、私はげんきです。


――「“NHKらしくない”ものを目指したらダメだった」ともおっしゃっていましたが、「ガッテン!アニメ」以外はどうだったんですか?

小国:スベりまくりでしたね(笑)。「ガッテン!アニメ」はいいんですけど、パロディーの方とか全然ダメでしたね。

長谷:「ガツ的ビフォーアフター」っていう、他局の番組のパロディーを作ってみたんですよ(笑)。

小国:番組の中で、たとえば「冷え性が劇的改善!」みたいな“ビフォーアフター”を見せる演出が結構多かったので「劇的で、ビフォーアフターね…」ときたらアレだよなと。ガッテンアニメも人気が出てたし、じゃあアレのオマージュってことで「ガツ的でいいじゃん!」と思って作ってみたんですけど、まぁ~再生回数が伸びなかったですね。

Facebookではほとんど本編に入る前に再生を止めてしまう方が多くて。“3秒の離脱と10秒の壁”っていうものがあるんですけど、3秒もたなかったんです。

「何でこんなに伸びないんだろう」って分析した時に、「結論がなかなか出てこない」というところが問題だったとわかって。僕たちはどうしてもテレビ番組の作り方が身にしみついているから、どうしても番組タイトルやコーナータイトルを出してスタートしたくなる。

だから、「これは『ガツ的ビフォーアフター』です」ということを明示しないといけないという強迫観念にとらわれていて、結構な尺を使ってオープニングアニメーションをつけていたんです。でも、それがいらなかったんですよね。「いいから、さっさと結論から言ってくれない?」と思われてしまうみたいで。

長谷:最後まで引っ張って発表するのが、“テレビの文法”なので、結論を引っ張りがちなんですよね。

小国:すごくスベった記憶として残っていますね…。僕たちも自分がユーザーの時はそういうふうに思って見ているのに、どうしても作り手になると忘れがちなので、逆にトライしてみて良かったです。番組班には申し訳なかったですけど(苦笑)。

長谷:「きょうの料理」(毎週月~木曜夜9:00-9:25、NHK Eテレ)の動画(「料理助手かんべさんの0.5品」)でも、余った食材を使った料理動画なので、最初に余っちゃった半分のネギなどの材料を見せてから作り方を説明したんですけど、これが要らなかったんですよね。最初においしそうな完成品がないと、人は見ないんだなと。

――編集部員の方々は、全員テレビの制作をしているんですよね?

長谷:そうです。みんな専業ではないんです。テレビ番組の制作をしながら、兼業でやっています。

小国:みんな普通にディレクターやデスク業務をやっていたので、ネットのことも全然分からなかったんです。

「料理助手かんべさんの0.5品」はおいしそうな料理を簡単に作れるレシピ動画
「料理助手かんべさんの0.5品」はおいしそうな料理を簡単に作れるレシピ動画(C)NHK


変な演出、やめました


――もともと「“NHKらしくない”ものを作ってください」というオーダーもあったんですか?

小国:いや、そういうことは言われていなかったです。ただ、NHK全体の課題として、「若い世代に番組の情報・価値を届ける」ということがあり、デジタルコンテンツではそれが特に強く求められていたんです。

でも、そもそもデジタルの世界の文法がわからないし、若い世代のニーズもつかみあぐねている。だから、分かんないなりに、制作会社さんの知見をもらったり、いろんなことをトライアンドエラーしながら作ったりしましたね。最初は失敗しかなかったですけどね…。

だから、どういうものが受けるというポイントが分かるまでにはすごく時間もかかりました。

長谷:ただ、ダメなものはすぐ分かるので、すぐにやり方やパターンを変えればいいので、それはネットのいい部分ですね。「あ、これ無理だ」っていうことが分かれば、それをやめちゃえばいいだけなので。

小国:だから「ガツ的ビフォーアフター」はもうやってないですよ。他にも「爆速ガッテン」とかも…。そういう変な演出はもうやめました。ちなみに、どちらも僕が考えた演出だったんですけど、大反省ですね。やっぱり料理と同じで、素材がいいんだったら、あまり余計なことはしないで、お皿に並べた方がいい場合もある。いろいろやったけど、刺身が一番うまい!ってことがあるように。

――アニメを制作しているクリエーティブユニット・AC部も、基になる番組は確認しているんですか?

長谷:はい。過去の放送はもちろん見ていただいています。

――その上でこういう仕上がりになるんですね…!

長谷:そうそう(笑)。ディレクターは1回の放送を数カ月かけて作っているので、こういう、番組の方向とは違うものを発想するのは難しいんですよね。この動画はなかなか思いつかないと思います。

――ネット上では、AC部の存在を知っている人が動画を見ることも多かったと思います。そういう、ファンからのコンテンツへの流入も意識するんですか?

長谷:そうですね。例えば、「コズミックフロント☆NEXT」(毎週木曜夜10:00-11:00、NHK BSプレミアム)の動画での、神木隆之介さんや菊池亜希子さんの起用は、彼らがネット上にファンが多いからというのも、理由の1つでしたし。でも、それだけじゃないんですよね。

小国:そうですね。もちろんそれは意識することなんですけど、そこに依存するとまずいなって思っています。

毎回タレントさんが出演してくれれば、再生回数も伸びるとは思いますが、そうしていると、特定のタレントさんのファンの方が見るメディアになってしまって、それ以外の人には関係なくなっちゃうリスクがありますよね。

だから、大事にしているのは、日常的にはコツコツと更新していくことだと思っています。

これは制作会社さんが教えてくれたんですけど、“バントヒットの法則”っていって、ホームランのような派手さはないけど、バントでもなんでも塁に出たぞっていうような“堅実な動画”をコツコツ積み重ねていくのが大切だってことなんですけど。

「それくらいの気持ちでやらないと絶対に心が折れますよ」ってアドバイスされました(笑)。だから、僕たちは動画の再生数がフォロワー数を10でも100でも超えてくれればOKという目標を立ててやっています。

そうやってコツコツ作っていくことで、「1.5chってなんか面白いじゃん」とか、「役に立つじゃん」って思ってもらえるサービスになればいいなと思っています。

毎回ホームランを狙っていると、疲れてもたないんですよ。たまーにでればいい。それで、そのホームランが、「『足裏拭き』で蚊に刺されにくくなる!?」や「ばっちゃん」の動画で打てたことがうれしかったんですよね。

どちらも有名なタレントさんが出ているわけじゃないし、NHKらしい王道のコンテンツだと思うんですけど、それでホームランを打てたことがうれしかった。

長谷:蚊の動画は、日本では410万回再生だったんですが、英語版をNHKワールドのFacebookで出したら海外では1417万回(10/30現在)再生されたんです。そういう、いろんな広がりもありましたしね。海外の反響もすごかったです。

――コンテンツとしての力を蓄えるということが大切なんですね。

小国:そうですね。NHKらしいベーシックな動画がきちんと広がっていくことが「1.5ch」をやる意味なんだと思っています。

あとはバランスですよね。ベーシックなものだけでもだめですし、「ガッテン!アニメ」のように“尖ったコンテンツ”も必要。

1度、国民的漫画を描いていらっしゃる漫画家さんが、「ガッテン!アニメ」について書いてくれたこともあったんですが、その方は、ある種の“尖ったコンテンツ”だから面白いと思ってくださったんだと思うんですね。だから、極端なことを言えば、「ガッテン!アニメ」の再生数は全然伸びなくていいと思っています。

全部の動画がちゃんとしたベーシックなものというのも良くないし、再生数がいかなくても、「1.5ch」の存在感を強くしてくれる個性のあるコンテンツは必要ですね。

「ガッテン!アニメ」はとにかく、“狂気とカオス”が足りているかどうかだけが大切にしています。

長谷:そういう個性も大事なんですよね。

――最後に、今後どのようなものを発信していきたいですか?

小国:今は、“ハウツー”や“ハートウオーミング”なものを中心にしていますが、そうじゃないジャンルを開発したいですね。

長谷:“驚き!”とかですよね。科学番組でも、ロケで“驚きの動画”ってたくさん撮れているので、それが埋もれないようにしたいんです。一回番組で使っただけではもったいないような動画をいろんな味わい方で紹介していきたいですね。

小国:そういう、感情に訴えかけるような動画ってNHKにはたくさん眠っているんです。見た人が「なんだこれ! とんでもないものが撮れているな!」と思うような画が強くて人の感情を揺さぶるようなコンテンツにチャレンジしてみたいと思っています。そういうものを、いろんな番組から開拓している最中です。

でも引き続き、「LIFE!」(不定期放送、NHK総合)などがやったように、ここでしか出来ない表現に挑戦していける場にしたいです。“守り”に入る気はないので、みんなが好きなことをできる場にしたいなと思っています。

長谷:今も、みんなが「参加させてよ!」と言ってきてくれているので、この“文化祭の前日”のようなノリをずっと保っていきたいです。

「“文化祭の前日”のようなノリが続くといいな」と楽しそうに語る2人
「“文化祭の前日”のようなノリが続くといいな」と楽しそうに語る2人

この記事はWEBザテレビジョン編集部が制作しています。

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【HP】http://www.nhk.or.jp/ten5/

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  • SNSで「狂気がすごい」と話題になった「ガッテン!アニメ」制作秘話とは?
  • 【写真を見る】アニメーションに突然差し込まれる実写映像がシュールさを強調させている
  • 科学番組担当の長谷英里子氏(左)と、編集長の小国士朗氏(右)
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