どんな役にもハマる俳優・阿部寛の意外な過去「20代は不遇の時代だった」
2005年の「ドラゴン桜」(TBS系)は、第46回ザテレビジョンドラマアカデミー賞の主演男優賞を受賞。このドラマには今では超有名になっている若手俳優が多数出演していた。
「山下智久もそうだけど、新垣結衣もいれば、長澤まさみもいたし、小池徹平もいたからね。そういうデビュー間もない子たちと共演できたのは貴重ですね。でも、このドラマは僕が90%セリフを話していて、セリフに追われて大変でした。長ゼリフも多かったんですけど、そういうときには徹平と新垣が頑張れという顔をしてくれるんですよ。だから、難しいセリフのときは、教室の後列にいた2人を見てやってました(笑)」
続く「結婚できない男」(2006年フジ系)では、40歳を過ぎても結婚できない皮肉屋で偏屈な男を演じ、阿部の三枚目キャラが大きな話題を呼んだ。
「この役に挑んだのは、『TRICK』のイメージが強かったから、もう一つ別の何かを作りたいと思ったからです。今は、結婚できない、しない人の話は珍しくないですが、当時はあまりなかったですからね。あと、ちょっとオタクの人たちが喜んでくれればと思い、人には言えない少し恥ずかしいところを全部盛り込んで役を作っていきました。そうしたら視聴者の方にすごく反応していただけたので、うれしかったです」
2009年の「白い春」(フジ系)では、殺人罪での刑期を終えた元暴力団組員を好演。「結婚できない男」とは真逆ともいえる寡黙な演技を見せた。
「それまではコメディーが多かったので、シリアスな役で評価していただけるとは思っていませんでした。現場では(自身が演じた春男の実娘)さちを演じた大橋のぞみちゃんにどうやったら気に入られるかばかりを考えていました。そうしたら、さちの育ての親を演じていた遠藤憲一さんも同じことを考えていたみたいで、一緒にお酒を飲みに行ったときにその話になり、2人で大笑いしました」
「TRICK」に次ぐ長寿シリーズとの出合い
翌年放送された「新参者」(TBS系)では、警視庁日本橋署の刑事・加賀恭一郎役に。連続ドラマのほか、SPドラマ2本、そして2018年1月27日(土)に公開される「祈りの幕が下りる時」を含む劇場版2本が作られ、「TRICK」に次ぐ人気シリーズとなった。
「ストレートに演じることをあまりしてこなかった僕にとっては、この7年間、『新参者』シリーズに携われたことは貴重な経験でした。今回、久々に加賀恭一郎をやるにあたって、過去の作品を見直したのですが、加賀は事件の解決の仕方がとてもスマートなんです。多分、このシリーズを応援してくださった方も、加賀のスマートさを気に入っていただけたのではないかと。個人的にも加賀恭一郎をやってきたから、『下町ロケット』のような作品にチャレンジできたのではないかと思っています」
その「下町ロケット」(2015年TBS系)では、ロケットエンジンと心臓の人工弁の開発に関わる中小企業の社長・佃航平を熱演。
「演出の福澤克雄さんは『半沢直樹』(2013年TBS系)も撮られている方なので、とにかく福澤さんの期待に応えたいと思いました。そういう意味ではプレッシャーもありましたが、この現場では若手がすごく頑張ってくれて。みんなが本当にいい芝居をしていて、僕も刺激を受けましたし、それぞれがそれぞれに戦っている姿には頼もしさを感じました。本当に幸せな現場だったと思います」
さまざまな役に挑戦し、それらの多くがハマリ役と評されることの多い阿部。俳優としてのこれからは?
「これまでドラマアカデミー賞を一つの糧にして、そこで評価されるのを目標にやってきました。20代のときにあまり役をいただけなかったことに対するコンプレックスがあり、だからこそ毎回違うアプローチの役を選んできたのですが、自分で自分のできることを確認したかったのかもしれません。とはいえ、これまではどこかで見たものを組み合わせて作った感じがあったので、そろそろ初めての道を行かないとダメだと思うんですよね。なので、これからは自分で前例のないことに挑戦していかないといけないなと思っています」
映画「祈りの幕が下りる時」
2018年1月27日(土)公開
原作=東野圭吾/監督=福澤克雄
出演=阿部寛、松嶋菜々子、溝端淳平、田中麗奈、キムラ緑子、烏丸せつこ、春風亭昇太、音尾琢真、飯豊まりえ、及川光博、伊藤蘭、小日向文世、山﨑努ほか