【テレビの開拓者たち / 森 彬俊】編集長が自ら語る“ノイタミナらしさ”へのこだわり
2005年にアニメ作品の放送枠として開設され、以降、バラエティーに富んだ斬新な作品を次々と放送、アニメファンから熱狂的な支持を得ている「ノイタミナ」。この深夜アニメ枠で放送される作品群の製作を統括する“編集長”を2014年から務めているのが森彬俊氏だ。「銀の匙 Silver Spoon」(2013、2014年)、「乱歩奇譚 Game of Laplace」(2015年)、「舟を編む」(2016年)などのヒット作を世に送り出してきた彼に、現在放送中の「いぬやしき」の見どころや、ノイタミナというブランドへの思いを語ってもらった。
「自分が一番やりたいことって、これじゃないか」と思ったんです
──森さんは、アニメが作りたいという思いからフジテレビに入社されたんですか?
「もともとアニメは好きだったんですけど、学生のころは、テレビアニメって、あくまでもそれぞれの制作会社が作るもので、テレビ局は放送枠を用意するくらいの関わり方しかしていないものだと勝手に思い込んでいて。どちらかと言えば、ドラマや映画を作る部署に行きたくて、フジテレビを受けたんです。
そして入社後すぐ、弊社の作品をパッケージ化する部署に配属されたんですが、たまたま隣の部署が、ノイタミナを中心にアニメを作っているチームだったんですね。そこで彼らが自分たちで作品の企画・立案をしているのを見たときに、『自分が一番やりたいことって、これじゃないか』と思ったんですよ。それ以来、ずっとアニメの部署への異動願いを出し続けて、ようやく6年前に今のアニメ開発部へ異動することができたんです」
──アニメ作品の制作に携わるようになって、初めてその醍醐味を感じた作品は?
「やっと冷静に見られるようになったのは、アシスタントプロデューサーとして参加した『PSYCHO-PASS サイコパス』(2012年)からですね。オリジナル作品だったんですが、総監督に本広克行さん、脚本に虚淵玄さん、監督にProduction I.Gの塩谷直義さんと、一流のクリエイターをお呼びして、これは必ずいいものにするぞという確固たる思いがチーム全体にあって。みんなでシナリオ会議からスタートして、キャスト選びとか、どういう絵にするのかとか、ゼロから物が生まれる瞬間に立ち会うことができて、非常に興奮したのを覚えています。完成した第1話を見たときは、ものすごく感動しましたね。実際、この作品はものすごい反響をいただいて、第2期(「PSYCHO-PASS サイコパス2」/2014年)もやって、その後、映画(「劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス」/2015年)もやらせていただくことができて。本当にうれしかったです」
──そんな中で、2014年からはノイタミナの編集長に就任されましたね。
「本来、編集長という役職はうちにはないんですが、ノイタミナチームを取りまとめる役として、便宜的に編集長という言い方をしてるんです。ただ、正式な役職ではないとはいえ、大きな責任が伴うポジションですから、前任者から引き継いだときは正直、ものすごいプレッシャーでした(笑)」