毎回、かなり苦しみながら考えています
――鈴木京香さん演じる鳴海理沙は、「文字の神様が降りてきた」という言葉が決めぜりふですが、麻見さんは実際、文字の神様が降りてくることはありますか?
それがなかなか降りてこないんですよ…(苦笑)。よくクリエーターの方は、散歩しているときなどにふっとアイデアが湧くと言いますが、私は一切なくて。とにかく考え続けるしかありません。
インターネットや書籍で資料を集めながら、きっかけがあればメモをして、ネタ帳を見ながら相性がいいアイデアを組み合わせていきます。そして材料がそろったら、キャラクターを作って、プロットを立てて、ようやく一つにまとまるんです。
毎回、かなり苦しみながら考えていますね。時間を掛けてとにかく頑張る。パソコンの前で一日10時間以上考えても浮かばないときはまた時間を置いて、ということの繰り返しです。私にも文字の神様が降りてくるといいのですが…。
――警察小説を得意とされていますが、それはなぜでしょうか?
警察小説のいいところは、探偵小説と違って捜査のための“動機”が明確なことです。私立探偵だと、なぜ一市民が事件に首を突っ込むのか、という動機が必要なんですね。読者の方も、警察ものというパッケージがあるとすぐに物語に入り込めると思うんです。
警察ものをお読みになっている方は、警察組織についても理解してくれています。登場人物それぞれの立ち位置も分かってくださるので、小説の中では最小限の説明で済む。また、チームの強みが出せるというのも警察小説の利点ですね。
その最小単位がバディで、刑事たちは捜査会議をやりながら事件を進めていく。私はこの捜査会議が好きで、よく書くんです。会議の部分を詳しく書かれる方は少ないと思うのですが、私の場合はある程度ストーリーが進むと捜査会議のシーンを出します。
読み進めていくうち、話が分からなくならないように、今何が問題になっているかを明確にするためです。適宜“図”を入れたりして、未解決な問題を可視化すると、読者の方もしっかり付いてきてくれます。