「私は普通の恋愛がしたいです(笑)」(水川)
――濡れ場の撮影はスイッチの切り替えが大変そうですが…。
スイッチというよりは、キャスト・スタッフ含めて自然とそういったムードになりますね。私の場合、濡れ場はアクションシーンを撮っているような気持ちでいました。「どの角度が一番官能的に見えるのか」とか「顔をこう上げるとセクシーに見える」とか、カメラを通して相手の役者さんと作っていくイメージでした。だから、監督の演技指導は殺陣の稽古をつけられている感じがしました。
――ほかに、御法川修監督からはどんなオーダーがあったのでしょうか。
「女性の神話を描きたい」とおっしゃっていましたね。だから「女性らしい女性でいてほしい」と言われました。監督も脚本づくりに参加されているので、監督の頭の中にある「奈津像」が細かく話に練り込まれていたし、作品を撮っている間は1mmもぶれなかったです。私が思い描く奈津とのギャップがあったときには、話し合いながらうまく擦り合わせて演じていきました。
――この作品を通じて新しい恋愛観や結婚観は生まれましたか?
奈津みたいに、自分の性に対しての欲求を自由に突き進むことってすごく覚悟がいることだし、なかなか踏ん切りがつけられないものですよね。だけど、それが彼女の強さであり、見習うべき点というか…。自分が変えたくないことや変えられないものに対してちゃんと向き合うことは参考にしたいのですが、私はもっと安定した普通の恋愛がしたいです(笑)。
――不倫や女性の解放など、この作品のように人間の欲望を出す作品が世間に受けている背景についてどう思いますか?
たとえ自分がしたいことでなくても、きっとどこかに秘めているものだと思います。秩序が保たれてさまざまなものが抑制されている中で、本当に見たいものだったり興味があるものは、スキャンダラスな作品だったりするんですかね? 不思議ですよね。
――男性、女性それぞれの目線で物語を楽しんでもらえそうですね。
男性がこの作品をどう捉えるかは分かりません。逆に私が聞きたい(笑)。ただ、決して爽快なドラマではないと思うんです。やっぱりモヤモヤしちゃいます。でも、いろいろ制約されてしまう時代に、この作品が放送できるというのは、表現する者として「大きな道しるべができたのかな」と感じます。視聴者の方にとっても「自分がどうしたいのか?」ということを、奈津ほどでなくても解放してあげたり、見つけるヒントになったり、背中を押すような作品になればいいなと思います。