「視聴率競争という古い価値観にこだわるのは本当に意味がないこと」【テレビの開拓者 / 角田陽一郎】
僕の番組の企画の立て方は「テレビという媒体を利用してビジネスをしましょう」という発想
──その後、2009年には動画配信会社・Goomoを立ち上げています。
「プロデューサー・総合演出を担当していた『明石家さんちゃんねる』(2006~2008年TBS系)が終わって、次のクール以降、担当番組が何もない時期があったんです。そんなときに、社内で新規プロジェクト募集の貼り紙を見ていたら、動画配信の会社を作ることを思い立ち、すぐに応募しました。
Goomoは、TBSの子会社として設立したんですけど、ちょうど今のAbemaTVやクラウドファンディングみたいなことをやってたんですよ。有吉弘行さんの番組とか有田哲平さんの番組とか、200本くらい作ったんじゃないかな。これ以降、僕は番組を企画するとき、編成部を通さずに、経営側にビジネススタイル込みで提案するような企画しか立ててないんですよね」
──そんなビジネススタイルの例を挙げると…?
「『カタリダス~MAKE IT GREAT~』(2010年TBS)は、アーティストがPCで自らをプレゼンするという、パワポ(※パワーポイント=マイクロソフト社製のプレゼンテーションソフト)がないと成立しない番組で。マイクロソフトが制作費を出してくれたんですが、マイクロソフトの名義は、スポンサーではなく“技術協力”。広告費を払ってCMを打たなくても、結果的に宣伝になるんだ、ということを証明した番組なんです。また、『イク天(イクゼ、バンド天国!!)』(2016~2017年BS-TBS)のTSUTAYAも同じですね。スポンサーではないけれど、優勝したバンドに100万Tポイントを贈呈する、という。そのことが結果、TSUTAYAの宣伝になっているわけです。これまでのテレビは、『御社のCMを放送するから、この番組に何億円ください』という形でビジネスをしていたんですが、僕の場合は、企画の立ち上げの段階から組んでビジネスしましょう、そのためにテレビという媒体を利用しましょう、という発想。もはやCMのウソはバレてるし、宣伝と番組本編を分ける必要はないと思うんですよね」
──現在は、いとうせいこうさんとユースケ・サンタマリアさんが、さまざまなゲストを招いてトークを繰り広げる「オトナに!」(TOKYO MX)が放送中です。前身の「オトナの!」(2012~2016年TBS系)から、長年にわたってコアな人気を博していますね。
「視聴率に左右されないコンテンツのビジネスモデルとして、地上波放送と並行して、YouTubeでも配信を始めて。今もYouTubeで配信しています。最初は、全国各地から『自分の地域でも「オトナの!」が見たい』という問い合わせがかなり多くあったので、地方局でもネットしてもらいたいと思って、系列全局に打診したんです。ところが、見事に全部断られて(笑)。それでネット配信という形を思いついたわけです。普通は、キー局が制作する番組をネットで流すことは、地方局の死活問題に関わるということで、なかなか認められないものなんですけど、うちの番組は、当の地方局に一回相談して断られてるんだから、問題ないだろうと(笑)。僕としては、『徹子の部屋』(1976年~テレビ朝日系)みたいに、長く続く番組になったらいいなと思ってます」