ブレイクダンス 初のユースオリンピック出場者が決定! 異例の19ムーブを勝ち上がったBBOY&BGIRL
オリンピック史上初となるダンススポーツ競技種目としてブレイキン(ブレイクダンス)が正式採用されたことで話題を呼んでいる"ブエノスアイレスユースオリンピック(BAYOG)"の出場選手を決める最終予選"WDSF世界ユースブレイキン選手権(WDSF World Youth Breaking Championships)"が、5月20日(日)、カルッツかわさき(川崎市スポーツ・文化総合センター)にて開催された。
男女合わせて34ヶ国87名のBBOY&BGIRLたちが出場し、オリンピック出場と世界一の座をかけ繰り広げられた熱きダンスバトル。なんとこの日は、予選ラウンドから決勝トーナメントまで総勢19ムーブを踊るという、ブレイキンバトルにおいて異例とも言える過酷な状況でバトルが行われた。
まさに実力・気力・体力・精神力のすべてが試される激戦を制したのはどのBBOY・BGIRLだったのか? 改めて決勝トーナメントの模様を中心にライブレポート!
地元川崎を背負ったBGIRL・Ramが勢いを持った海外勢を完封!
予選ラウンドとグループリーグを勝ち上がった8名によるトーナメント戦で勝者を決めるファイナルの舞台。オリンピックの出場権は"各国成績上位1名"という狭き門でありながら、BGIRLは日本と韓国がそれぞれ2名づつ決勝トーナメントに駒を進めるという展開に。このことにより、勝ち進まないと自国の代表に慣れないという緊張感のあるファイナルとなった。
その中で優勝候補と言われていたRamは、準決勝で韓国のYellと対戦。Yellはクールなブレイキンを踊るタイプで、絶対に負けないオーラがメラメラと出ていることもあり、この日勢いに乗っていたBGIRLだったので苦戦しそうな雰囲気が流れていたが、そんな空気を打ち消すかのようにRamは、自分の持ち味である力強いブレイキンでYellを圧倒し、決勝戦に駒を進める。
そして、決勝戦では準決勝で日本のUruhaを倒したロシアのMatinaと対決。このMatinaも独特のムーブと愛らしいキャラクターで会場の空気を味方につけていたBGIRLだ。ブレイキンには向いてなさそうなロングの三つ編みヘアーをパワームーブからフリーズのつなぎで利用したりなど、世界には色々なブレイカーがいると思わせるムーブでRamに挑む。
一方Ramは、フットワークからパワームーブという流れで容赦無く攻め立てる。
決勝トーナメントは、前半2ムーブ→インターバル→後半2ムーブという、1回のバトルで1人4ムーブ行うという過酷すぎるルールであったが、Ramは決勝の舞台でもスタミナ切れ感じさせない豪快なブレイキンで勝負。
今大会が長期戦になることを見越して、普段とは違う練習や準備をしてきたと話していたRamであったが、その言葉通り、後半戦に勢いがなくなっていったMatinaを追い詰めるようにスパートをかけた。
バトルが終わりジャッジの得点が発表されると、驚きの結果が。1ムーブごとに5人のジャッジがポイントで優劣をつけるシステムにおいて、相手にわずか1ポイントしか与えないという圧倒ぶりでRamがバトルを制した。
自身が在籍するチームの"THE FLOORRIORZ"といえば、川崎を拠点にしたチームであるが、Ramは地元開催となる大会で世界のBGIRLを完封。地元川崎に優勝という最高の錦を飾った。
シーンを背負う覚悟を持ったShigekixがファイナルで見せたもの
BBOYは決勝トーナメントに出場する8名が全員違う国であったため、自動的に全員がオリンピック出場権を手にした形であったが、彼らの目的はオリピックの出場権だけではない!世界のBBOYが集まる大会でトップになる。ダンスバトルでは優勝以外に価値はないのだ! と言わんばかりの気迫溢れる空気感が会場を支配。BBOYたちの熱いバトルが繰り広げられた。
その中でも異彩を放っていたBBOYが、日本のShigekixだ。ここまで圧倒的な実力差で勝ち上がってきたShigekixは、決勝トーナメントで大覚醒。次々と各国のBBOYを倒し決勝の舞台へ。
決勝戦で戦うのは、これまた圧倒的なブレイキンで予選から頭角を表していたロシアのBumblebeeだ。
実はこのBumblebee。ShigekixがDanceFactのインタビューで、気になる海外選手として名前をあげていたBBOYなのだ。
戦うべくして決勝の舞台で出会った2人のBBOYによるバトルが口火を切った。
先行のShigekixが、ステージを走り回り会場を煽ると空気は一気にブレイキンバトルの盛り上がりに。
のっけから連続ヘッドスピンとフリーズで一気に歓声をかっさらう。フリーズの体制から多彩な音ハメをするなど、様々な技とテクニックでBumblebeeを煽る。
対するBumblebeeは、大技のパワームーブを繋げて対抗。ここまでのバトルでは楽しそうにバトルをしていた印象だが、100%以上のものを出さないと勝てないと判断したのか、真剣な表情に変わり、長身を生かした豪快なパワームーブで戦い抜いた。
この熾烈な戦いを制したのはShigekix。20ポイント中わずか2ポイントしか与えない圧倒ぶりで優勝を手にした。
Shigekixの戦いぶりを振り返ると、予選からなのだが、BBOYの中で彼だけが会場を煽って観客を盛り上げるという行為を徹底していた。後の記者会見でも「楽しむことも大事だと思っていたので、会場を煽ったりもした」と言っていたが、これはブレイクダンスシーンを背負うものとしての使命感もあったのではないだろうか。
「世界大会なのだからもっと盛り上げたい。ダンスバトルの激しさや興奮をもっと感じて欲しい。」
そんなブレイキンに対する愛と責任がShigekixのバトルからは伝わった。
さらにこの日はゲストショーケースも特別で、日本のHIPHOPカルチャー初期の立役者であるレジェンドBBOYたちが集結し"THE BBOY LEGENDS"としてこの日しか見られない貴重なショーケースを披露。
"REGSTYLE"や"FORMER ACTION"といった多ジャンルのエンターテイナーやダンスチームも出演し"WDSF世界ユースブレイキン選手権"を盛り上げた。
豪華なゲストショーケースが続くなか、印象的だったのは本大会の開催地である川崎を拠点にする"THE FLOORRIORZ"の存在だ。この日彼らは、ゲストショーケースだけでなく、会場の運営をチーム一丸で行なっていた。ブレイクダンスの世界大会で数々の優勝をしているチームであるが、プレイヤーとしてだけでなく、ホスト国としてサポート面でもしっかりブレイキンに貢献する姿は思わず胸が熱くなる光景であった。
初のダンススポーツ競技種としてブレイキンが採用されたユースオリピックの最終予選大会で、日本人が男女優勝という最高の結果で幕を閉じた本大会。
優勝者を招いた記者会見では、海外メディアから「なぜ、日本人はこんなに強いのか教えて欲しい」とまで賞賛されるシーンもあり、日本のBBOY・BGIRLの強さを世界にアピールできた大会だったと言えるだろう。
しかし、ダンスやスポーツは最後まで何が起こるかわからない。この日、優勝できなかったBBOY・BGIRLたちは、打倒日本を目標にオリンピックの舞台にやってくるだろう。
きっとこの日以上の激戦が繰り広げられるに違いない。ShigekixとRamの戦いはまだ始まったばかりなのだ。
取材・文●のざたつ
-BBOY-
優勝:Shigekix(JPN)
準優勝:Bumblebee(RUS)
3位:Bad Matty(ITA)
-BGIRL-
優勝:Ram(JPN)
準優勝:Matina(RUS)
3位:Yell(KOR)
《BAYOG 出場者》
-BBOY-
・Shigekix(JPN)
・Bumblebee(RUS)
・Axel(POL)
・X-RAIN(CHN)
・Bad Matty(ITA)
・Reflow(BEL)
・D-Matt(CAN)
・KennyG(TPE)
・Martin(FRA)
・Jericho(AUS)
・Broly(ARG)
・Jordan(RSA)
-BGIRL-
・Ram(JPN)
・Yell(KOR)
・Matina(RUS)
・Seniorita Carlota(FRA)
・Lexy(ITA)
・Connie(USA)
・Vicky(NED)
・Emma(CAN)
・Ivy(CYP)
・Vale(ARG)
・Anastasia(LAT)
・Ella(AUT)
BBOY FINAL
BGIRL FINAL