今年も激戦！「衛星放送協会オリジナル番組アワード」受賞9作品の選出理由とは？

芸能一般

2018/06/20 13:23

ー今年のオリジナル番組賞各部門の選考と受賞作の評価のポイントについて教えてください。

ドラマ番組部門

ドラマ番組部門は、さきほど言及した時代劇、（スポンサーへの配慮が必要な）地上波では放送しにくいテーマのものや社会性のある作品が、毎年応募されています。そのなかで最優秀賞は、時代劇としての完成度の高さから「三屋清左衛門残日録　三十年ぶりの再会」（時代劇専門チャンネル）に決まりました。主演の北大路欣也さんの卓越した演技力、彼を取り巻く優香さん、渡辺大さん、伊東四朗さんらの役者陣も魅力的でした。しっかり練られた脚本も評価した部分です。また、審査委員特別賞の「連続ドラマW　プラージュ～訳ありばかりのシェアハウス～」（WOWOWプライム）は、主演の星野源さんがいい役作りをされていて、ある種の斬新さが目立ちました。

ドキュメンタリー番組部門

ドキュメンタリー番組部門の最優秀賞は、「BS1スペシャル　なぜ日本は焼き尽くされたのか～米空軍幹部が語った“真相”～」（NHK BS1）です。しっかり海外取材をし、歴史的意義のある生音声（太平洋戦争末期、日本への無差別空爆を計画・実行したカーチス・ルメイをはじめとする空軍幹部246人の肉声テープ）を発見し、無差別空爆にいたった米軍の背景を解き明かしました。制作費も含めて、NHKの持つ制作力を見せつけた番組でした。それとは対照的だったのが、審査委員特別賞に決まった「棋士・藤井聡太～取材ノート～」（囲碁・将棋チャンネル）です。制作費はそれほどではないと思いますが、いち早く藤井くんに注目したことは評価に値します。奨励会三段（13歳）の時から密着しているんですね。この映像はゆくゆく資産になるはずです。

中継番組部門

中継番組部門の最優秀賞「徹底マーク！ゴールキーパー～2017　J1第7節『FC東京－浦和』BS102ch データ連動中継～」（NHK BS102ch）は、単にサッカーの中継をするのではなく、キーパー専用カメラなどを駆使して、ゴールキーパーの動きにだけフォーカスした非常に特色のあるものでした。また、惜しくも受賞を逃しましたが、いわゆる“裏京都”だけを紹介する「京都異界中継」（BSプレミアム）など、中継番組部門には衛星放送ならではの番組が多かったです。

バラエティ番組部門

バラエティ番組部門の最優秀賞「ザ・カセットテープ・ミュージック『A面に入れたいサザンの名曲』」（BS12 トゥエルビ）は、かつてカセットテープで音楽を聴いていた世代にだけ刺さる番組作りをしている潔い作品です。逆にいえば他の世代は捨てていると言えます。取り上げるサザンオールスターズの曲も、初期の曲だけ。最近、サザンのファンになった人は捨てています(笑)。マキタスポーツさんと音楽評論家のスージー鈴木さんが、独断と偏見で評論しているのもいいですね。

情報番組・教養番組部門

情報番組・教養番組部門の最優秀賞は、「ドキュメンタリー～The REAL～女子ソフトボール～2020からその先へ　世界一へのプロジェクト～」（J SPORTS 3）です。スポーツの中でもメジャーとは言い難い競技にフォーカスしてその魅力を伝えることは、スポーツ専門チャンネルのJ SPORTSだからこそできた企画だと思います。受賞はなりませんでしたが、「BS1スペシャル欲望の資本主義2018～闇の力が目覚める時～」（NHK BS1）も、私は高く評価していた番組です。視聴者のターゲットを経済学の知識がある人に絞って、経済の分析を深堀りしていたのには感心しました。

アニメ番組部門

アニメ番組部門の最優秀賞「うたのじかん」（アニマックス）は、約2分と短い作品ですが、子供の記憶に残るオリジナル楽曲を制作し、オリジナルアニメとともに放送するというコンセプトの面白さが受賞の理由です。そのほかの応募作はマーベル（アメコミ）、アニメのフェスティバルに焦点を当てたもの、東日本大震災を題材にした作品など、まったく異なる視点のものばかりで、アワードの成熟さを感じました。

ミニ番組・番組PR部門

ミニ番組・番組PR部門の最優秀賞は、「映画の遺伝子『ヘイル、シーザー！』編」（スターチャンネル1）に決まりました。約4分のなかでこの作品の解説とともに、ハリウッド・テン（1947年に議会侮辱罪で監督や脚本家10人がハリウッドを追放され、後に連邦刑務所に送られた）やレッドパージ（赤狩り）といったハリウッドの歴史的背景もわかるようになっていたのは見事でした。

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