――くんちゃんのように、自分よりも幼い、手のかかる存在が現れたことで、黒木さんにも(より自分をかまってほしいという)赤ちゃん返りすることが?
弟とは2歳しか年が離れていないので、自分としては覚えていないんですけど、親に言わせると、そういうことがあったみたいですね(笑)。うちの母親から「お姉ちゃんだから」と言われた記憶はありませんが、年齢的に下の弟の方が手がかかるじゃないですか。だから、母親が弟を抱いていると「何で? 私は?」という雰囲気を醸し出していたみたいです(笑)。多分、同性の姉妹とか、この映画における兄と妹でも感じ方は皆違うんでしょうけど、自分だけに向いていた親の愛情が(妹と)二分されるのは寂しいと思うし、純粋な子供からしたら「何で急に?」と思うんでしょうね。
――確かに、くんちゃんがまだ赤ちゃんのミライちゃんに嫉妬してイタズラしたりするのは、かわいくもあり、切なくもありました。
自分が認められている安心感を認識するには時間がいるだろうし、そこにはいろんな経験も必要なんだと思います。だから、くんちゃんの姿を見ていると、親が私を私個人として認識してくれたのはいつか、それを私自身がいつから認識できたのかなど、思うところも多かったりして。映画自体はフィクションですが、そうやって自分と重ねて考えられるのも、この作品の魅力ですよね。
――では、くんちゃんの声を演じられた上白石さんの印象は?
上白石さんの声は、男の子の声にも女の子の声にも聞こえて、すごく魅力的だなと思いました。というのは、4歳ぐらいの子の声は、男とか女に決まり切らない不安定なところがありますよね。その微妙な感じがハマっていたし、上白石さんの声を聞いたとき、すぐにくんちゃんだと思いました。
――収録は一緒のブースで行われたそうですね。
演じていても、隣からくんちゃんの声が直接聞こえてくるので、私としてはとてもやりやすかったです。でも、声のお芝居は本当に難しいと思います。もちろん、技術的な難しさもあるんですけど、声にどれだけ自分の感情を乗せられるのかの挑戦で、後で聞いた時に、ちょっと違うかなと思う部分もあります。だから、画で見えているキャラクターの表情や動きをできるだけまねして声を出すように心掛けているんですけど、やっぱり声優さんはすごいなと思います。
映画「未来のミライ」
7月20日(金)公開
配給=東宝
監督・脚本・原作=細田守/声の出演=上白石萌歌、黒木華、星野源、麻生久美子ほか