お祭りムードに乗っかれないストーリーテラー
――物語のナビゲーターである古今亭志ん生(たけし)は、ナレーションだけではなく出演もする、異色な登場の仕方をしています。その重要な役割を担う人物を志ん生に選んだのはなぜですか?
このドラマの題材をオリンピックに決める前に、戦前戦後をまたいでいる人を主人公に、日本の戦争の歴史を深刻に重く描くのではないドラマをできないかなと考えていたんです。
僕は、戦争中に志ん生が「東京では好きな落語ができないから」って満洲に行って、そこで死ぬ思いをして、帰ってから急に落語家として成功したっていうエピソードがすごく好きなんです。そんな志ん生を主人公にしたらどうですかねという話をしていました。
結局そうはならなかったんですが、オリンピックを斜に見ているというか、お祭りムードに乗っかれないストーリーテラーが、1年間オリンピックの話をするというのもいいなと思って、志ん生の高座を語りにするということを提案しました。
――落語を取り入れたことで、ドラマにどんな要素が加えられているんでしょうか。
このドラマにはいろんな時代の人が出てくるんですけど、語りが落語だと「その頃あの人は」って関係ない人の話をしたり、志ん生が自分の話をしたり、そういうことがやりやすいです。
だから結構便利で(笑)、時間や場所を飛ばすときに重宝しています。
それに、オリンピックの歴史には、落語の演目に当てはめられるようなエピソードが多いんです。
例えば、1908年のロンドンオリンピックで、マラソン中に意識を失った選手をゴールの方に無理やり担いでいって、そのゴールが無効になったっていう「ドランドの悲劇」って呼ばれている出来事があるんです。
その話とか、ちょっと「らくだ」や「粗忽長屋」みたいだなって思ったり。ドラマにも出てくる「富久」っていう落語は、芝から浅草まで走るっていう、そんなことできるの?っていう話なんですけど、そういううそだか本当だか分からないところが、この作品にあっているような気がします。
あとは、描いていくのが将軍とか殿様の話ではなく、庶民の話なので、全体的に下町っぽいんですよね。そういう世界観のドラマなので落語に合うのかなと思っています。
――この作品を通して、視聴者へ伝えたいメッセージがあればお願いします。
オリンピックに日本が初めて参加する時や、オリンピックを日本に呼ぶ時に、日本人は本当にピュアな憧れの気持ちを持ってやっていたということを、僕も書いていて気づかされることが多かったんです。
だから、僕と同じような気持ちを持ってもらえるとうれしいなと思います。
このドラマが終わると本当に東京オリンピックがくるので「昔はお祭りだったんですよ」というのが分かるといいですね。それは、今まさに僕が資料を読みながら脚本を書いていて一番感じていることで、どういうふうに伝えていったらいいかなと思っている部分です。
金栗さんと田畑さんが主人公ではありますけど、2人をまたぐ人物として嘉納治五郎(役所広司)先生がいるんです。
嘉納先生は一番最初に日本人でIOC委員になって、そこからずっとすごく純粋に「オリンピック」を目指していて、けっこう滅茶苦茶なことを言う方なんですよ。
嘉納先生を見ていて、特に当時の純粋さを感じたというか、気が付いたので、そういう人がいたということを知ってもらいたいです。
今、オリンピックに対して、あんまりいいニュースを聞かないというか、日本人みんなが斜に構えて見ている感じがするので、このドラマを見て、2020年のオリンピックが違うように感じられるといいなと思っています。
2019年1月6日(日)スタート
毎週日曜夜8:00-8:45ほか
NHK総合ほかにて放送
※初回は15分拡大
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