柄本佑、前田敦子、三浦透子出演の「素敵なダイナマイトスキャンダル」はもうひとつの「全裸監督」だ! <ザテレビジョンシネマ部>
現在は主にエッセイストとして知られる末井昭は、奇しくも村西とおると同じ1948年生まれ。ただ2人の活躍時期にはズレがある。村西がセールスマン上がりという出自で、ビジネスの鋭い才覚を発揮しながらバブルとともにキャリアの頂点を迎えたのに比べ、末井の出自はサブカル文化系。彼が本領を発揮したのは70年代のアングラ・カルチャーを背景としたフィールドであり、ピカピカした80年代に入るとむしろ勢いは失速していった。つまり末井と村西はエロの巨匠としてのピークが交差しているわけで、それは両者の作品のカラーの違いにも反映している。
かつて末井昭が編集長としてセルフ出版(現・白夜書房)で手掛けた「NEW self」(1875年創刊)、「ウィークエンドスーパー」(1977年創刊)、「写真時代」(1981年創刊)などは、エロ雑誌の看板を掲げつつ実質的にはコアなサブカル雑誌だった。
あらゆるカルチャーを接続させる何でもアリの自由な方針で、発禁の憂き目にしばしば遭いながらも先鋭的な特集や記事をエネルギッシュに展開。誌面に登場したのは写真家のアラーキーこと荒木経惟や森山大道、イラストレーター&エッセイストの南伸坊や安西水丸、美術家&作家の赤瀬川原平、編集者&作家の嵐山光三郎、作家の田中小実昌、評論家の平岡正明や上野昻志、現代美術家の秋山祐徳太子、ミュージシャンの三上寛や巻上公一(ヒカシュー)、漫画家の赤塚不二夫や岡崎京子、あのタモリまで! まさに当時の文化人オールスターズといった趣で、今となっては「こんな大物までエロ雑誌に出ていたのか!」と驚かされる豪華な顔触れである。ちなみに「ウィークエンドスーパー」のネーミングは、ジャン=リュック・ゴダール監督の『ウイークエンド(1967)』が元ネタ。これだけでも末井の出自や個性がよく分かる。
また『素敵なダイナマイトスキャンダル』では、音楽家&文筆家の菊地成孔が荒木経惟役を演じるワンシーンがある。この当代きってのカルチャー・セレブである菊地本人がアラーキーの真似をしている――といった二重性をあえて前面に出したゲスト出演の楽しさも見ものだ。