近年、80年代アイドル出身女優が連続テレビ小説で母親役を務め、注目を集めている。放送中の「エール」(毎週月~土朝8:00-8:15ほか、NHK総合ほか)では菊池桃子と薬師丸ひろ子がそれぞれ主人公とヒロインの母を好演中。キャリアを重ね、今また視聴者を虜にする80年代アイドル出身の朝ドラ“母”女優たちに注目する。
菊池&薬師丸 正反対の母親像
「エール」では、主人公・古山裕一(窪田正孝)の母・まさを菊池桃子が、ヒロイン・関内音(二階堂ふみ)の母・光子を薬師丸ひろ子が演じる。
まさは、三歩下がって夫を立てる良妻賢母タイプの女性。文通で知り合った音とスピード結婚しようとする裕一に反対する。
第26回(5月4日放送)では結婚の許しを乞う裕一に「あなたは、外国に何をしに行くの?そこに結婚は必要?」と厳しい言葉を投げかけ、第29回(5月7日放送)では裕一の夢を後押ししようとする音に「もう、傷つく裕一を見たくないんです。あなたも、子どもをもてばわかってくれる。成功を求めて傷つくより、身の丈にあった幸せを掴んでほしいの」と訴えかけた。
演じる菊池は1984年にアイドル歌手デビュー。同年の日本レコード大賞新人賞を受賞したのを皮切りにヒットチャートをたびたびにぎわせ、清純派アイドルとして人気を博した。
結婚後、2児の母となったのちは大学院で修士号を取得。2012年からは、女優業の傍ら母校の短大で客員教授として教べんをとる知性派女優として、新たな魅力を開花させている。
一方、薬師丸が演じる光子は早くに夫を亡くし、女手ひとつで家業と家族を守ってきた逞しい女性。「女性も自立すべきである」という進歩的な考えから音の夢を応援する、頼れる母だ。
第28回(5月6日放送)では、音を励ますため雷おこしをまるかじり!「割れなきゃ何べんでも噛むの!大事な人のためなら、向こうが呆れるほどやるの。諦めちゃいかん」と説教した。第23回(4月29日放送)で見せた裕一の父・三郎(唐沢寿明)との丁々発止のやりとりも視聴者を楽しませた。
薬師丸は1978年、角川映画「野性の証明」でスクリーンデビュー。その後、「セーラー服と機関銃」(1981年)、「探偵物語」(1983年)、「Wの悲劇」(1984年)などヒット作品を連発。歌手としても高い評価を得た。
2000年以降、再び女優・歌手として活動を開始。連続テレビ小説初出演作となった2013年の「あまちゃん」での“清純派の大女優”鈴鹿ひろ美役も好評を博し、「いだてん~東京オリムピック噺~」(2019年)で大河ドラマに初出演。宮藤官九郎脚本作品でコメディエンヌとしての才能も開花させた。