小泉今日子、原田知世、富田靖子…注目される“母”たち
朝ドラの母親役で注目を集めた80年代アイドルといえば、印象深いのが「あまちゃん」でヒロイン・天野アキ(能年玲奈/現・のん)の母・春子を演じた小泉今日子だ。
春子は18歳だった1984年にアイドル歌手を目指して岩手から上京した(※少女期は有村架純が演じた)だけあって、アイドル全盛期の音楽に精通していた。劇中では松田聖子や柏原芳恵らのヒット曲が流れ、春子自身も劇中歌「潮騒のメモリー」を歌うなど、作品全体にアイドル全盛期の香りが漂った。
小泉自身は1981年にオーディション番組「スター誕生!」がきっかけで芸能界入り。“花の82年組”の一人として「渚のはいから人魚」「なんてったってアイドル」などヒット曲を連発した、80年代アイドルを代表する一人だ。
「あまちゃん」で80年代の音楽を熱く語り、芸能事務所を作ってヒロイン・アキの芸能活動を後押しする春子を80年代アイドル出身の小泉が演じたことは、当時を知るファンにとって嬉しい“事件”となった。薬師丸ひろ子との共演も話題となり、ドラマをヒットに導く一因となった。
映画「時をかける少女」(1983年)や「私をスキーに連れてって」(1987年)など大ヒット作を飛ばした原田知世も、80年代に人気を博したアイドルであり朝ドラ“母”女優として再び注目を集めた一人だ。永野芽郁がヒロインを演じた「半分、青い。」(2018年)で、楡野鈴愛(永野)の幼なじみである萩尾律(佐藤健)の母・和子(わこ)を演じた。
おっとりしているようで突然金八先生のモノマネを披露するなどチャーミングな和子を好演。ドラマ終盤、病に冒された和子が“岐阜犬”のマイクを通して律と本音を語り合うシーンは、同作の名シーンの一つとなっている。
実は原田が朝ドラで母親役を務めるのは、「半分、青い。」が2度目。「おひさま」(2011年)でヒロイン・陽子(井上真央)の母・紘子を演じた。紘子は陽子の子ども時代に持病で他界。こちらも、はかなさの魅力で視聴者を虜にした。
「スカーレット」(2019-2020年)でヒロイン・川原喜美子(戸田恵梨香)の母・マツを演じた富田靖子も、アイドル的な人気を誇った一人だ。1983年に映画「アイコ十六歳」のオーディションでヒロインを勝ち取り、同年「オレンジ色の絵葉書」で歌手デビュー。理知的な雰囲気と舞台もこなす演技力で人気を呼んだ。
「スカーレット」では、夫・常治(北村一輝)を立てながらも喜美子の夢を応援する母を好演。娘たちに心配をかけまいと笑顔を絶やさない健気なキャラクターで、視聴者に愛された。