「サッカーは11人でやるスポーツではない。それは常に思っています」
――今回も、各クラブにゆかりのある方々にインタビューをされていますが、取材の対象は、平畠さんの人選ですか?
平畠啓史:もちろん、僕の中でもともと会いたかった方、お会いしたことはないけど話を聞いてみたかった方がほとんどなんですけど、この本の取材をする中で、「このチームだったら、あの人に会ってみたら?」というアドバイスをいただくこともあって。だから、全部僕が決めたわけではないんです。ただ、みなさん、僕が以前から興味を持っていた人たちであることは間違いないです。
――取材をする際、何か心掛けていたことはありますか。
平畠:この本に限ったことではないんですけど、僕は、サッカーは11人でやるスポーツではない、というのは常に思っていて。クラブを陰で支えて働いている人たちにも、ちゃんとドラマがあって、それぞれが面白いんですよね。そんなことを、少しでも多くの人に知ってもらいたいなと思いながら取材をしていました。
――そんな中で、特に印象に残っている言葉は?
平畠:今回、京都サンガF.C.の松浦(紀典)さんという、日本で初めて「ホペイロ」というプロの用具係になった方に取材をさせていただきまして。で、浦和レッズの水上(裕文)さんとFC町田ゼルビアの渡辺(直也)さんという、クラブのマネージャーさんにも登場いただいてるんですけど、この3人が、奇しくも同じことをおっしゃってたんですよ。それは、1足のスパイクを磨くことに対する熱い思い。取材は別々だったのに、みなさん、本当に同じことをお話しされていて。
――その思いはどこから生まれてくるものなのでしょうか?
平畠:これは本には書かなかったんですけど、みなさん、学生の頃にサッカーをやっていて、当時から人のスパイクを磨いていたらしいんですね。それも「おまえ、磨いとけ」って言われて仕方なく、とかじゃなく、自分から進んでチームメイトのスパイクを磨いていた、と。そして、それは決して苦ではなかったとおっしゃるんです。その話を聞いて、これも才能のひとつなんかなって思いました。僕も学生時代はサッカー部でしたけど、そんな感覚になったことないですからね。何なら、自分のスパイクも磨いたことないぐらいで(笑)。
本来は、自分がサッカーすることだけを考えていればいいわけだから、人のスパイクが汚れていようが新しくなろうが、関係ないわけじゃないですか。だけど、今ホペイロやマネージャーをされているお三方は、学生のときから人のスパイクを磨いていた。きっと天職なんでしょうね。
平畠啓史・著
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